「『何をやっているの?』と好奇心を持って対等な心からかける言葉なのか、それとも何かを禁止する言葉や、心ない言葉なのか。大人の言葉は少しずつ子どもの心に蓄積していきます。そうやってその子の心ができていくんだろうと思います」(黒井氏)
自分自身も、子どもの頃に大人の無理解に傷ついたことはたくさんあると言う。同時に、大人になってから、美術教師として生徒に接したときに、反発されたこともあると振り返る。
「もしかしたら私も“傷つける側”だったことがあるかもしれない。大人の言葉に、どれだけ子どもを傷つける強い力があるかということは、自覚しなくちゃいけないと思います」(黒井氏)
想像力を奪わない、ということ
想像力とは何だろうか。
『まっくろ』の主人公の少年は、すぐには理解されなくても、自分の頭に浮かんだことを形にしようと、黒い絵を何枚も何日も描き続けた。この絵本の作者ふたりも、20年という長い時間をかけて、まだ存在しない一冊の絵本へとそれぞれの想像を巡らし続けた。
必ず、想像以上の何かが生まれる尊い瞬間はやってくる。
子どもたちから、想像力を奪わないでください――。
作/高崎 卓馬(たかさき たくま)1969年、福岡県生まれ。早稲田大学法学部卒業。クリエーティブ・ディレクター、小説家。ACジャパン創設30周年CM「IMAGINATION/WHALE」で海外の広告賞を多数受賞。小説に『はるかかけら』『オートリバース』などがある。
絵/黒井 健(くろい けん)1947年、新潟県生まれ。新潟大学教育学部卒業。主な絵本作品に『ごんぎつね』『手ぶくろを買いに』『あのね、サンタの国ではね…』「ころわん」シリーズなどがある。2003年山梨県の清里に「黒井健絵本ハウス」を設立。