15年前の倫也くんは度胸があって大人びていた。

もう15年前のことになる。2007年に公開された映画「俺は、君のためにこそ死ににいく」の撮影で、俳優としてまだ何のキャリアも積んでいなかった向井さんは、同じ特攻隊員のキャストの一人として、当時まだ10代だった中村倫也さんと出会う。

「僕の役は、結局セリフがなかったんですが、倫也くんは実在のモデルもいる重要な役で。若いのに、堂々とお芝居していて、近くで彼の芝居を眺めながら、『度胸があるなぁ』と(笑)。僕の方が年上なのに、すごく大人びて見えましたし、実際に大人だったと思う。ここ数年で、やっと彼の成熟した中身に、年齢が追いついてきたんじゃないのかな、なんて思いますね」

撮影/山本倫子
 

15年前にはまったくの無名だった2人が、41年の歴史を誇る日本屈指のエンタテインメント集団「劇団☆新感線」の最新作、いのうえ歌舞伎『狐晴明九尾狩』で共演する。

「倫也くんが演じる安倍晴明の敵となる、九尾の狐を演じます。僕の役は、狐に乗っ取られている状態と、素の状態が混在するのですが、基本、物語は陰陽師と狐との“化かし合い”によって展開していく。前回、僕が新感線に出させていただいたとき(※2017年にIHIステージアラウンド東京で上演された『髑髏城の七人』Season風)は、無界屋蘭兵衛という剣士の役でしたが、今回はまた違うパターンの悪役です。ただ、アクションというよりはいろんな策略を巡らせる頭脳戦なので、ロジックな中に、新感線らしいネタの部分もあったりして、頭を使う台本です(笑)」

いのうえ歌舞伎『狐晴明九尾狩』

さまざまな映像作品で向井さんの活躍を目にしている人にとっては、向井さんが舞台に立つことを意外に思うことがあるかもしれない。でも、向井さんが初めて舞台に立ったのは、NHK連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」で水木しげる役を演じた翌年、2011年のことだった。以来、1年に1本とまではいかないが、3年に2本ぐらいのペースで、さまざまな演出家とタッグを組んでいる。