2021.10.20
# マンガ

いじめられているのは恥ずかしいことだと思っていた…感音性難聴のアイドルが語る本音

我妻ゆりかさんインタビュー前編

金田一咲希は高校入学直前のある日、ピアノレッスンに向かう途中で見知らぬ同世代の少女とぶつかり手を擦りむくが、相手から無言で落とした楽譜を丁寧に拾われ絆創膏をもらう。

咲希は印象的だったその少女とクラスメイトとして再会し、名前が及川奏音、そして耳が不自由だと知る。学校では障害を理由に周囲と距離を置く奏音に、淋しさを覚えた咲希はどうにか分かり合おうとし、そんな彼女の姿に奏音の態度も次第に変わっていき…。

感音性難聴の女子高生を主人公に、気鋭の漫画家くずしろさんが描く『雨夜の月』。障害を抱える少女と彼女を理解したいもう一人の少女、そしてその周囲の人々の機微を繊細に紡ぎ、SNSを中心に支持を集めている意欲作だ。

『雨夜の月』第1巻が10月20日より発売!

「補聴器がコンプレックスだったこともあります」

そう話すのは、主人公の及川奏音(おいかわ・かのん)と同じく感音性難聴であり、同性、同年代でもあるアイドルの我妻ゆりかさん。難聴を抱えて悩んだ思春期、いかにして彼女は自分らしさを見つけていったのか。本記事では、補聴器をつけて雑誌やテレビで活躍されている我妻さんに、お話を伺った。

「音にモザイクがかかっている」の表現に「それだ!」って

――作品を読んで、どのような感想を抱かれましたか?

まず、絵がとてもきれいで、好みでした! 内容的にも、私にとって共感するところがすごく多かったです。難聴の当事者にしかわからないような描写もたくさんあって、かなり調べられて作られているという印象がしたんです。

奏音が、自分の耳にどんな風に音や声が聞こえているか、同級生の咲希に説明するシーンも、「音にモザイクがかかっている」「すりガラス越し」と喩えているのに、それだ!と思いました。私も友達とか同じようなことを人に聞かれることはこれまでにあって、「補聴器を外すと一気にもやがかかる感じ」「輪郭が分からなくなる感じ」と説明していたんですけど、こういう風に表現するとわかりやすいなって。

高校に入学して隣の席になった奏音と咲希だったが…。『雨夜の月』(講談社)より

――我妻さんが奏音の性格や言動に共感するところはあるのでしょうか。

本当にすごくいっぱいあるんですよ! 顔がものすごく話し相手の近くに寄っちゃうシーンとか。自分は意識してないけど、マネージャーさんなど話し相手は「近い! 近い! 近い!」ってなることとかあって、これは私のエピソードを描いているのでは…!? と思いました(笑)。

あとは、私も子供の頃から本が好きで、「本は聖域」と語っているところでしょうか。ジャンルや作家で読んでいたというより、図書館中の本を読みましたと全校生徒の前で表彰されるくらい、何でも読んでいたんです。漫画も、図書館に置いてあった、「まんがでわかる歴史の本」などを読みました。

ただ、何で読書が好きなのかという理由についてまでは私はこれまで考えたことがなかったんですけど、作中で奏音の近所に住んでいたお兄さんが、「本や漫画は音も文字で書いてあるから、もしかしたら楽しめるかも」とたくさん本をくれるシーンを見て、私が本に書いてある世界にこんなに一気に夢中になれるのは、もしかしてそれも理由にあったのかな? と気づきました。

 

本で言えば、私も本を買うときなど、前の補聴器は今のものより聴こえづらかったのもあって、店員さんとレジでレシートとかのやりとりをするのが苦手で、聞かれる前に「レシートいらないです」と先に要望を伝えていました。

そのことをツイートしたら、同じ境遇の人から、「わかる! 私もやっちゃう!」とたくさんリプライをもらったこともあるんです。バスや電車で掲示板の見えやすいところに座って気を張るという場面もそうですし、私だけじゃなくて、感音性難聴の当事者の方で共感する人はたくさんいる漫画なんじゃないかなと思います。

関連記事