目のあたりにした火山島の誕生──西之島ができていくプロセスを目撃できる幸運

蘇る40年前の興奮と遠隔観測の進歩

島はどのようにできるのか【第1回】

西之島。本州からはるか離れた南の海で、火山噴火によりこの島は誕生し、成長をはじめた。2013年11月、激しく黒煙のジェットを吹き上げ、爆発を繰り返している様子がテレビで頻繁に放映され、「新島誕生」の見出しが世を賑わせた。

島はみるみる成長し、となりの旧い島や岩礁を飲み込み、数ヶ月後には直径1 kmを超える大きさとなり、日本の国土増加や排他的経済水域の拡大にも注目が集まるようになった。海に囲まれ、大小さまざまな島を有する日本列島がかたちづくられていく中で、火山噴火というダイナミックな地質現象が、その一役を担っている姿を見せた瞬間でもある。

——日本列島には多くの火山島が存在する。ここでは数回にわたって、西之島という島をさまざまな面から紹介しながら、そのほかの国内外の例も含めて火山島について解説していきたいと思う。

火山島として生き残る島、消滅する島の違い

火山噴火が新たな島を生むという現象は、じつは日本近海でたびたび起きている。約半世紀前の1973年に同じ西之島のほぼ同じ場所で島が誕生し、注目を集めた。この島は、2013年以降の噴火で新しい溶岩に飲み込まれてしまったが、それまでは「新島誕生」を象徴する存在として知られていた。

さらに時代を遡り、1930年代には、鹿児島県南方の薩摩硫黄島近海での海底噴火により、昭和硫黄島と呼ばれる小島が誕生し、今なお存在している。この「新島誕生」は、戦前の激動の時代の中、新聞でも大きく取り上げられた。

そして2021年8月、本企画が進みはじめた矢先、西之島よりさらに南にある福徳岡ノ場で大規模な噴火が発生し、奇しくも新島が誕生した。ただ、この島が火山島として長く存在できるかどうかは、まだわからない。

【写真・測量図】徳岡ノ場に誕生した新島福徳岡ノ場に誕生した新島(海上保安庁の海域火山データベース「福徳岡ノ場」より https://www1.kaiho.mlit.go.jp/GIJUTSUKOKUSAI/kaiikiDB/kaiyo24-2.htm)

できたばかりの島は、大きく成長する前に、海蝕により短期間のうちに消滅してしまうこともある。実際にはこのような例の方が多く、とくに伊豆小笠原地域では「新島誕生」の傍で、新島の衰退と消滅も同じように起きている。

このように全ての新島が「島」として残れるわけではなく、波に打ち克てるだけの強固な基盤を、火山噴火によってつくることができるかどうかが、「島」として存続できるかどうかを決めている。

西之島は、近年の噴火により大量の溶岩を流出し、堅牢な島を創り上げた。その噴火活動は、火山島のでき方、つまり新島が誕生し、成長し、生き残るための条件を知る上で、貴重な機会を私たちに提供している。

西之島研究が重要な理由

日本列島には多くの海底火山や火山島がある。このうち活火山として定義されているものには、10の海底火山、23の火山島が含まれ、それらは国内の活火山全体111のうち3割近くを占める。

【写真】活火山の分布活火山の分布。その3割が海底火山、火山島だ(気象庁の「日本の活火山分布図」より)

本土やその付近の火山の多くは、地震や地殻変動を検知するための観測網が整備され、常時観測火山として、気象庁による手厚い監視下にある。

しかし、海底火山や火山島として存在する活火山は、観測網の整備が行き届いているわけではない。そのような火山は、海底からの爆発や、新島が生まれるような激しい噴火活動を起こす可能性を秘めているが、具体的な現象やハザードについて十分に理解が進んでいるわけではなく、有事の際の火山活動の把握やその影響の評価は、簡単ではないのが現状である。

西之島の火山活動の理解を通して、海域火山に特有の問題の、解決の緒を探ることも大切なのである。

では西之島の火山活動を詳しく知るために、私たちはどのような方法を取れば良いのだろうか? この問題は、西之島に限らず、日本列島に存在しながら十分な観測体制が敷かれていない、多くの離島火山に共通する問題でもある。

アクセスが困難な離島火山では、必要な調査観測をすぐに行えるわけではない。火山活動を理解するために、限られた条件の中で、研究者はどのような方法でアプローチすれば良いのか試行錯誤し、調査観測におけるさまざまな工夫、機器開発、ノウハウの蓄積が必要となる。

西之島は、このような離島火山の活動の理解を目指したさまざまな研究手法を試行するための、実験場としても重要である。

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