「0」の発見!
位取り記数法で重要なことは「0」の発見です。
石が10個になったとき、その10個の代わりに、少し離れた位置に1個の石を置いたとしましょう。置いた人は、違う場所に置いたという意識がありますが、そのことを知らない他の人から見ると、たんに1個の石が置いてあるだけです。つまり、1と10の区別がつかないのです。
そこで1の位には何もないことを表す数字が必要になります。それが0です。この0の存在によって、1と10の区別がつき、11と101の区別もつきます。
位取り記数法は古代バビロニアにすでに使われていました。古代バビロニアでは60進法が使われていて、その名残が、時間や角度の測り方に残っています。
古代バビロニアの位取り記数法にも当然、0にあたる表記がありました。しかし、古代バビロニアでは0は10や101の0のような空位を表す0で、0をひとつの数として認識していたわけではありません。何もない0を数として認識したのは5世紀のインドであったといわれています。いわゆる0の発見です。

「0」のない数え方…?
このときより以前は、0を数として認識していませんでした。このことが現在にも影響を残しています。
こんな話があります。1999年12月31日に、世界中のホテルやレストランで予約が多く入ったそうです。これは2000年1月1日の21世紀を祝おうということでした。しかし、実際は2000年1月1日はまだ20世紀で、21世紀は2001年からです。
なぜこのような誤解が生じるかというと、昔は0がなかったことがその原因です。イエス・キリストの誕生以前と以後で、紀元前、紀元後と分けられていますが、紀元後は1世紀から始まります。紀元0世紀は存在しません。このためにズレが起こり、1950年というのは19世紀ではなく、20世紀になります。
そして、キリストが誕生した年が紀元0年ではなく、紀元1年なので、生誕100年というのは紀元101年になり、世紀の変わり目の誤解が生まれてきたわけです。
年齢の数え方に「数え年」がありますが、これにも0がありません。今は満年齢で数えていますので、生まれてから1年未満は0歳です。しかし、数え年では生まれたときに1歳とするので、1年のズレがあります。
ついでにいうと、数え年はさらに複雑で正月が来ると1歳増えるので、12月31日に生まれた赤ちゃんは、すぐに1歳、そして翌日には2歳ということになってしまいます。
以上は、10という数字には位取り記数法と0の発見の物語があるという話でした。もうひとつ、10にちなんだ話を紹介します。