2021年ノーベル物理学賞受賞が決まった気象学者の眞鍋淑郎さん。この受賞によって、地球温暖化が世界の重要な課題であることが、あらためて認識されました。
眞鍋さんとも親交のある古川武彦さんは、科学書や教科書の執筆などで活躍する大木勇人さんと共に、ブルーバックス『図解・天気予報入門』を刊行、温暖化がもたらすさまざまな気象現象や、天気予報の起源から未来の予報に向けた研究まで、天気予報にまつわる様々なトピックを解説しています。
生活に欠かせない天気予報。今やテレビやネットなどで、気になったらすぐにチェックできるようになりましたが、日本での科学的な天気予報や、予報を支える気象観測は、いつ、どのように始まったのでしょうか。
後篇となる今回は、コンピュータ予報の幕開けから現在のスーパーコンピュータを駆使する現在までの歩みと、コンピュータ予報を支えるビッグデータ技術のしくみを解説します。
コンピュータが天気予報を行う時代
日本でのコンピュータによる天気予報は、半世紀以上も前の昭和34(1959)年で、米国製の電子計算機「IBM704」を用いて始まりました。
コンピューターは、貨物船に載せたトレーラに格納されたまま、横浜港に陸揚げされました。コンテナーの横っ腹一面に張られた特大の白布の左半分には「JMA WELCOME IBM704」「Electronic Digital Computer」「 for Japan Meteorological Agency」「The First in the Orient」の英文が、また右半分には「祝」「みんなの天気予報をより正確にする…」「気象庁様納入IBM-704」「東洋で最初の超大型電子計算機」「日本IBM」などの文字が踊っていました。約8000本の真空管を用いた電子計算機でした。

最新のスーパーコンピュータは、水道管だらけ!?
コンピュータによる天気予報は、予報官が頼ってきた経験則とは無縁に、物理学の法則を用いてひたすら計算を繰り返す手法で行われます。予報結果には独特のくせがあり、初期はそのまま天気予報に使えるものではありませんでしたが、使用されるプログラム、コンピュータが進歩し、現在では予報官に代わって予報を行うまでに進歩しました。
天気予報には高性能のコンピュータが必要です。現在使われているスーパーコンピュータは東京都清瀬市の「気象衛星センター」の構内に設置されており、無数の計算ユニットの内部には、発生する放熱のために水道管が網の目のように張り巡らされています。

気象庁の天気予報に使われるスーパーコンピュータは、数年ごとに次世代機に置き換えられており、今後もますます性能をアップさせるでしょう。