2021.10.15
# 不動産

積水ハウス「敗軍の将」たちが続々告白…「私たちは、こうして地面師に騙された」

裁判資料から浮かび上がる「真相」
藤岡 雅 プロフィール

「銀行がオレオレ詐欺に騙されるようなもんや」と…

2017年6月、東京JR五反田駅からほど近い旅館、海喜館の土地を購入しようとした積水ハウスが、地面師グループに約55憶5900万円を騙し取られた

地面師とは地主に成りすまして、他人の土地を勝手に売却してしまう詐欺師たちのこと。当時、報道を通して世間に振りまかれたイメージは、狡猾かつ巧妙で、あの積水ハウスも騙してしまう空恐ろしい詐欺師像だったが、実態は少し違う。バブル時代に横行した詐欺の手口が、アベノミクスの地価高騰を受けて復活したもので、スキーム自体も30年前と変わらず、目新しさもほとんどなかった

ベテランの司法書士も「地主がホンモノかニセモノかを調べる方法もプロなら特段難しいことではない。取引相手の顔写真を第三者に見せて照会するだけ。不動産のプロなら容易に防げる手口」と語るほどで、当時から業界では「なぜ、騙されたのか」といぶかる声が上がっていた。

地面師事件の「稟議」を決裁した積水ハウスの阿部俊則元社長 Photo/gettyimages
 

ハウスメーカーのリーディングカンパニーであり、2兆円もの売り上げを誇る積水ハウスが巨額のカネをアングラ世界にばらまくという大失態。その本質を当初から見抜いていた当時の会長兼CEOの和田勇氏は、「銀行がオレオレ詐欺に騙されるようなもんや」と激怒した。

この取引の稟議書を決裁したのが当時、社長兼COOの阿部氏だった。

カリスマ会長だった和田氏は、事件の全容解明に乗り出し、社外役員らで構成される調査対策委員会が取締役会で承認された。同委員会は阿部氏の重い責任を指摘する「調査報告書」を作成する。ところが、阿部氏は18年1月の取締役会でクーデターを実行し、和田氏を失脚させてしまう。全権を掌握した阿部氏ら経営陣は、調査報告書を長らく隠蔽したのだった。

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