2021.10.15
# 不動産

積水ハウス「敗軍の将」たちが続々告白…「私たちは、こうして地面師に騙された」

裁判資料から浮かび上がる「真相」
藤岡 雅 プロフィール

決裁権者の阿部氏が見た「稟議書」の中身

それは稟議書の決裁の手順からもうかがえる。

繰り返すが阿部氏は当時の社長であり、この取引の決裁権者だった。稟議書は本来の手続きの流れと異なり、4人の回議者の審査は後回しにされた。最終決裁を行うはずの阿部氏が真っ先に承認の判を突いた。競合ひしめく一等地の取引を急ぐため、本来の手続きを踏まえずに阿部氏は決裁したわけだ。

ところがこの稟議書は後にその杜撰さを、同社の調査対策委員会から厳しく指摘される。取引は中間業者を介するものだったが、その業者の名前が決裁直前に変更になり、二重線で訂正されていた。そのため中間業者に関する内容に誤りが生じるなど、不確実性の高い危険な稟議書になっていた。

しかし、阿部氏はこれを意に介さず、特段の疑問も差しはさまないまま決裁してしまう。

実際の「稟議書」。回議者の審査は決裁権者の阿部氏の承認の後だった
 

このように取引は杜撰に進められたわけだが、阿部氏は裁判で次のとおり過失を否定している。

〈取締役は、特段の事情のない限り、各部署において期待された水準の情報収集・分析、検討が誠実になされたとの前提に立って自ら意思決定をすることが許されるというべきであり、この「特段の事情」の有無は、当該取締役の知識・経験・担当職務、案件との関わり等を前提に、当該状況に置かれた取締役がこれらに依拠して意思決定を行うことに、当然に躊躇を覚えるような準備・不足があったか否かにより判断すべきである〉(阿部氏の準備書面)

つまり阿部氏は、2兆円の売上高を誇るまでに成長した積水ハウスの大組織で、年間、数千本に及ぶ稟議を決裁する中、その判断の多くは部下が正しく仕事を進めていることを前提に決裁をしていたと主張しているのである。

SPONSORED