自民党総裁選が終わり、いよいよ10月31日の衆議院議員選挙に向けて本格的に動き始めた。しかし、情報が溢れるいま、フェイクニュースが広がり、それによって真実が歪んで届けられる事態も起きている。
元NHK報道ディレクターで、Yahoo!ニュースのプロデューサーもつとめる立教大学大学院特任教授の宮本聖二氏が、実際の選挙に影響したフェイクニュースの事象や、実際フェイクニュースに惑わされた若者の本音を紹介、フェイクニュースに惑わされないようにするためのメディアをはじめとした対策についても綴ってくれた。あなたは何を信じて投票をするだろうか。
「ヒラリーが児童買春に関わってる」
というフェイクニュース
デマや誤情報、いわゆるフェイクニュースをきっかけに投票に行く、そうした情報を信じて投票先を決める。近年そうした事態が危惧されています。
選挙が近づくと特定の候補者や陣営、政党をおとしめる言説が主にネットを中心に急増します。あるいは支持する候補を有利にさせたいとして粉飾した情報も出てきます。
そうした情報や言説は、しばしば正確でないことがあります。また意図して捏造されたデマであったり、荒唐無稽とも思えたりするようなものも少なくありません。
フェイクニュースが一気にクローズアップされた2016年のアメリカ大統領選では、民主党のヒラリー・クリントン候補がワシントンのピザ店を拠点にした児童買春に関わっているという嘘の情報が流されました。そして、デマを信じた男が銃を持ってピザ店に押し入るという事件にまで発展しました。

選挙にフェイクが影響するリスクとは
2020年の大統領選では、バイデン候補(現大統領)の得票に不正があり、結果ウィスコンシン州の投票率が200%を超えるというフェイクニュースが流れました。いずれも、クリントン氏、バイデン氏をおとしめようという悪意に満ちたものでした。アメリカ大統領選後、デマとトランプ前大統領の発言から2021年1月にはワシントンの連邦議会へトランプ支持の暴徒が乱入するという前代未聞の事件が起きた上に、さらにこれら暴徒は左派のANTIFA(アンティファ)だというデマが重なりました。

フェイクニュースを信じてしまって投票行動をすることがなぜリスクなのか。その当事者にしてみれば、言説を信じてしまい、結果的にデマに触れなければ思いもしなかった政党や候補に投票してしまうことになりかねません。自らの思いや信条の発露が歪められることになります。
同時に投票意思の総体までもが歪み、デマがなければ本来信任されることのない人物が議員や首長になってしまう危険があります。