マテ子は、夫を睨みつけた。夫は長女を危険に曝している。夫はずぶ濡れのまま、あっけにとられた顔でマテ子をただ見ていた。
その次の土曜日、マテ子がひとりでカフェにランチに行って帰ってくると、夫と長女はいなくなっていた。置き手紙を残し、夫が子供を連れて家を出て行ったのだ。
「私は洗脳されていない」
弁護士「はじめまして。私が夫さんの代理人の弁護士です。事務所の場所、すぐにわかりましたか?」
マテ子「はい。ありがとうございます。お手紙をいただいて、書面で返答となっていましたが、私はお会いしてお伝えしたいと思ってうかがいました」
弁護士「さっそくですが、お送りした手紙の通り、夫さんは長女さんとふたりで安定した生活をしており、離婚をしたいという希望です」
マテ子「結論からいうと、離婚には応じません」

弁護士「でも、もう夫さんと長女さんが家を出て3年以上経ちますし、今マテ子さんは…」
マテ子「まず、間違いを訂正させてください。夫と長女が一緒に家を出たのではなく、夫が勝手に長女を連れて家を出たのです」
弁護士「ですが、今マテ子さんはファームで暮らしていて、夫さんが何度か迎えに行ったとにきも、帰ることを断ったのですよね?」
マテ子「それも間違いです。ファームはシェルターです。夫は私を危険な生活環境に連れ出そうとしたから、私はそれが無理なことだと答えました」
弁護士「そういう経緯を踏まえて、夫さんは離婚するしかないと。お子さんの親権を譲ってほしいということで、弁護士である私を間に入れた話し合いを依頼したのですが」
マテ子「先生には時間を作っていただいたことに感謝をしますが、私は長女のことが心配なので、離婚はしません。夫が長女に冷凍食品やスーパーで買った食材だけを食べさせているなら、それは虐待です」