私たちはビッグテック企業の領土に縛りつけられた農奴なのだろうか

ひょっとして資本主義はもう終わっている?
ギリシャ生まれの型破りな経済学者であり、現職の政治家でもあるヤニス・バルファキス。彼の新作『クソったれ資本主義が倒れたあとの、もう一つの世界』の魅力を解剖する連載第3回。前回ではバルファキスが描く「2025年の民主化された社会主義の世界」と、そのカギとなるふたつの要素について紹介した。最後となる今回は、現代の資本主義に対するバルファキスの批判と、それに代わる別の選択肢を実現するための方法について探っていこう。 

もはや資本主義ではない。テクノ封建制だ

バルファキスはいまの社会をもはや資本主義とは呼ばない。2008年を境に、世界は大きく変わってしまった。バルファキスは、2008年以降の新たな生産様式を「テクノ封建制」と呼んでいる。

封建制では、封建領主が領土を領有し、その土地で暮らす農奴が生産活動を行なう。領主は、主従関係に基づいて農奴を支配する。農奴は奴隷と違って家族や財産を所有でき、ある程度の自由を認められるとはいえ、領主に身分的に支配されることには変わりない。領主は、領土と結びついた農奴の労働力を搾取して、権力と富とを磐石なものとする。

バルファキスによれば、フェイスブックやアマゾンなどビッグテックはもはや寡占企業ではない。アマゾンは市場ではない。彼らは巨大な利益収集装置であり、封建領主である。そのデジタルプラットフォームが彼らの領土である。私たちユーザーは、フェイスブックやグーグルの領土でタダ働きをして、せっせと労働力を提供しているだけではない。彼らが売り払う商品まで提供しているのだ。私たちは、ビッグテックのプラットフォームに縛りつけられた農奴なのだ。

 

アマゾンやフェイスブックなどの封建制を支えているのは、中央銀行のマネーにほかならない。となると、これで王、主権、国家、中央銀行、テクノ封建領主のすべてが揃ったことになる。

テクノ封建制は、2020年にパンデミックが起きてもほとんど揺るがなかった。同じ領主たちに、さらなるマネーをもたらした。このシステムは、解雇やレイオフの憂き目に遭った人たちにも給付金を支給したかもしれない。ただし、一時的な話にすぎない。人的資本になんらまともな投資をしていない。若者や学生にも。債務を相殺することにも。ビッグテックは、マジックマネーツリー(カネのなる木)から、いくらでもみずからのためにカネをむしり取ることができる。そして、ますますその基盤を強固なものとし、私たちの社会を牛耳っていく。

関連記事