マスコミがこぞって見誤った、岸田首相「新自由主義からの転換」の本当の意図

アベノミクスとの関係が見えていない

アベノミクスを「修正」するのか?

岸田文雄新政権は「新しい日本型資本主義」を掲げ、マスコミは、安倍晋三政権が提唱した「アベノミクスの修正を目指す」などと報じている。だが、実は「安倍政権の考え方」そのものだったのではないか。それを裏付ける証拠は、政権の公表資料に明らかだ。

岸田首相は自民党総裁選で「新しい日本型資本主義」という言葉を何度も強調し、公約でも「新自由主義からの転換」を訴えてきた(https://kishida.gr.jp/sousaisen/)。その中身は必ずしも、はっきりしていない。

新しく首相に就任した岸田文雄氏[Photo by gettyimages]
 

首相就任後、10月4日に初めて開いた記者会見では、新しい資本主義について「若者も高齢者も障害のある方も女性も、多様性が尊重される社会」「車の両輪は成長戦略と分配戦略」「政策の中心は科学技術とイノベーション」「地方からデジタルの実装を進めて、地方と都市の差を縮める」といった内容だった(https://www.kantei.go.jp/jp/100_kishida/statement/2021/1004kaiken.html)。

それでも、この会見で具体的に語った政策もある。それは「医師など公的価格の引き上げと金融所得課税の引き上げ」である。

公的価格については、冒頭発言で「医師、看護師、介護士、幼稚園教諭、保育士、こうした方々など社会の基盤を支える現場で働く方々の所得向上に向け、公的価格の在り方の抜本的な見直しを行う」と明言した。これは、本気で実現する構えなのだろう。

一方、金融所得課税については、記者の質問に答える形で「いわゆる1億円の壁を念頭に、金融所得課税についても考えてみる必要がある」と語った。明言は避けているが、総裁選当時から言及していたので、こちらも、やる気とみて間違いない。

この「増税発言」を受けて、東京の株式市場は急落した。各社世論調査の内閣支持率も総じて4割から5割台にとどまり、ご祝儀相場にしては、意外なほど、伸びていない。

記者会見を受けて、岸田内閣は「アベノミクスを修正」して「子育て世帯や中小企業への分配を手厚くする経済政策にかじを切る。格差を是正して中間層を拡大し、新たな成長につなげる」と報じられた(https://www.yomiuri.co.jp/economy/20211005-OYT1T50019/)。

こうした報道が続くと「岸田政権はアベノミクスの成長路線を修正して、分配重視路線に転換する」といった認識が定着しそうだ。だが、それは本当なのか。

経済政策の議論で言えば「新しい日本型資本主義」とか「新自由主義からの転換」といった言葉は、単なるキャッチフレーズにすぎない。むしろ、岸田首相が言及してきた「成長と分配の好循環」という言葉のほうが適切だ。

 
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