子供が大人を疑って、
自分たちで真実を見つけていく姿に圧倒された

12歳のとき、右も左もわからぬままに、初めてドラマの撮影に参加した。WOWOW『連続ドラマW 東野圭吾「分身」』は、東野圭吾さんの小説を原作にしたヒューマンサスペンスだが、自分の出番が終わる頃に、不思議な感慨に襲われた。「いつか、またこの場所に帰ってきたい」。漠然とそう思った。“この場所”というのは、ドラマでありながら映画的な撮影手法を取るWOWOWの現場のことだった。

「当時私は小学6年生でした。全編北海道ロケだったのですが、共演者の方もスタッフの方も皆さんキラキラしていて、ものづくりの現場って素敵だなぁ、と。私は、大人に囲まれながら部活動をしているような感覚でした。お芝居のことがまったくわからないからこそ、なんのプレッシャーもなく、撮影を楽しむことができたんです」(上白石萌歌、以下同)

 

その3年後、映画『ソロモンの偽証 前編・事件』と「後編・裁判」を観た。原作は、宮部みゆきさんが構想に15年、執筆に9年もの歳月を経て完成させた超大作で、ミステリーの金字塔とも謳われている。クラスメイトの死の真相を追求すべく、中学生が学校内裁判をするというストーリーに、「真実とは何か」「偽りとは何か」「正義とは何か」を突きつけられた気がした。

「思春期ならではの繊細さや葛藤を抱えた生徒たちが、大人と対峙する姿が魅力的だと思いました。子供は大人の言うことを鵜呑みにしやすいものですが、映画の中では、子供が大人を疑って、自分たちの力で正しさを見つけていこうとする。その行動力や正義感を見せつけられた時は、頭をハンマーで殴られたような、ものすごい衝撃がありました。物語が持つメッセージ性もさることながら、オーディションで選ばれたキャストはほとんどが同世代で、そのお芝居から放たれるエネルギーにも圧倒されたんです」

Photo by Aya Kishimoto