コロナ禍で不安も増えた
受験生や家族に捧げる言葉たち
2020年の受験は、小学校、中学校、高校、大学、どれも新型コロナウイルス感染拡大防止の大きな影響を受けた。受験生たちは様々な選択を強いられ、受験というものは風向きがどう変わったとしても、自分の進むべき道を見失わないために、しっかりとした信念をもつことこそが大切になることを改めて感じたのではないか。受験生はもちろんそれを支える親にも、同様の信念が求められる。親が自分の不安で子どもを振り回すようなことがあってはならない。
以下は、2020年6月にに発売された、教育ジャーナリスト・おおたとしまささんの『中学受験生に伝えたい勉強よりも大切な100の言葉:「二月の勝者」*×おおたとしまさ』(小学館)の中から、先行き不透明な状況での受験に臨む受験生に、人生の先輩としての大人が伝えるべきメッセージおよび挿し絵を12箇所抜粋したものだ。
もともとは平時の中学受験生向けの言葉ではあるが、特に現在の新型コロナ禍において、高校受験生や大学受験生にとっても大切なメッセージとなるだろう。これをまず親こそが腑に落として、泰然自若とした態度で受験生を支えてほしい。
中学受験の目的は?
1.
中学受験が終わったとき、
仮に第一志望に合格できなくても
笑っていられるとしたら、
それってどういうときだろうね。

「中学受験の目的は?」とストレートに聞かれるとつい「○○中学合格」などとわかりやすい答えを言いたくなってしまいますが、「仮に第一志望に合格できなくても笑っていられるとしたら……」と問われると、「自分たちは何をもって中学受験の成果や喜びとするのか」を自ずと考えることになります。まさに答えが一つではない問いです。
中学受験をする意味は十人十色、誰かに決められることではなく、中学受験生の数だけあり、各々そのために努力をすればいいのです。誰もがうらやむような超有名校に合格したわけでもないし、第一志望に合格したわけでもないのに、中学受験を終えてすがすがしい顔で「中学受験をして良かった!」という親子がたくさんいます。中学受験という経験を通して、他人との勝ち負けや世間の評判とは違う次元にある喜びに気づけたひとたちです。
2
どんな学校に行ったって
あなたならやっていける。

望みの学校に合格させることよりも、どこに行っても通用するひとに育てることのほうが、親の役割としての優先順位は高いはずです。一方で、望みの学校に入学できてその学校に強い愛着をもてたとしても、自分のアイデンティティを過剰に学校に依存するのは危険です。どんな立場にあっても「自分は自分」と言えるひとに育ってもらいたいですからね。
3
大きな選択のときこそ
直感って大事だよ。

いくら論理的に思考したところで、その前提となる情報が間違っていたり、不足していたら、結論が正しいとは言い切れません。学校選びのように不確定要素が多い大きな選択をするときほど、前提となる情報をそろえることは困難です。そのときに見えている情報だけで論理的思考をし、その結果を鵜吞みにすると、人間は理路整然と間違えることができるのです。
そこで感性の出番です。数字や文字に置き換えられる情報だけを扱う論理に対して、感性は数字や文字では表せないものを感知して反応する力です。論理的に考えると正しそうなことでも、感性が違う答えを指し示しているときには一度立ち止まる必要があります。論理では見落としている情報を感性が感じとっている可能性が高いからです。勉強すればするほど感性の大切さがわかってくるものです。