過去20年間の実質賃金減少トレンドを一変させる必要
では、実質賃金をこのように上昇させることが可能だろうか?
毎月勤労統計調査によると、実質賃金指数(現金給与総額、5人以上の事業所)は、2000年の113.3から2020年の98.8まで、12.8%ほど下落している。
これとは別に、法人企業統計と消費者物価指数から計算すると、1995年度から2020年度の期間で11.2%ほど下落している。
これらを考慮すると、上述のように実質賃金を今後20年間で9.7%引上げるのは、かなり大変なことだと言わざるを得ない。
現在の状況が続けば今後も実質賃金が下落する可能性が高いので、それを一変させるために、これまでとは異なる強力な成長戦略を実施する必要がある。
そうしないかぎり、いかに分配を適正化したところで、「貧しさを分かち合う」という結果になってしまうのだ。
実質賃金が増えないと1人当たり所得は約9%減少する
では、実質賃金が今後も伸びないとすれば、どうなるだろうか? その場合には、国民1人あたりの再分配後の所得は、現在より8.8%減少する。
こうした結果になるのは、つぎのように考えれば理解できるだろう。
2040年を2020年と比べると、就業者人口は0.807倍になるのだから、総生産額は0.807倍になる。他方、総人口は0.885倍になる。だから1人あたりの分配後所得は、0.807÷0.885=0.912になる。
つまり、約9%減少する。