「分配政策」だけでは、「20年後の生活水準」がいまより2割低下する

日本に必要なのは相当な生産性向上政策
野口 悠紀雄 プロフィール

人口ボーナス期の社会保障制度が重荷になっている

日本が直面している事態の本質は、就業人口の減少率が人口全体の減少率よりも高いことである。これは、「人口オーナス」と呼ばれる現象だ。このために、再分配政策を行なっても、その効果が弱まってしまう。

就業人口の増加率が人口全体の増加率より高い場合には、これとはちょうど逆のことが起きる。これは、「人口ボーナス」と呼ばれる現象である。

日本の高度成長期は人口ボーナス期であった。そして、高度成長期の終わりに、「福祉元年」の掛け声で、社会保障制度が大幅かつ安易に拡大された。その制度がいま重荷になっている。

人口オーナス期に必要とされるのは、まず第1に、人口ボーナス期に作られた再分配制度を見直すことだ。さらに、再分配と同時に、強力な成長政策を実施することだ。

 

分配政策の柱である金融所得課税から早くも撤退

「分配なければ成長なし」は魅力的なキャッチフレーズだ。しかし、以上で見たように、分配政策だけでは十分ではない。分配政策とともに、強力な生産性向上政策がどうしても必要だ。

現実には、実効性のある成長戦略を打ち出せないないのを隠蔽するために、分配が強調される危険がある。

一方で、分配政策の実効も難しい。金融資産所得への課税強化は分配政策の柱になるもので、岸田首相の総裁選では、この実現を掲げていた。しかし、早くもこれからの撤退を表明した。

したがって、分配問題も解決できず、成長もできないという結果に陥りかねない。

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