2大インフレ要因の中での「○○ショック」
中国恒大問題がきっかけとなって、今回我々が経験するであろう「○○ショック」(まだ名前はない)は、1990年頃のバブル崩壊やリーマンショックなどとは全く違った環境下で起こる。
今回のショックはまず、金融面において「リーマンショック後の超金融緩和の反動」と「パンデミックに起因するバラマキ」という、2大インフレ要因のさなかに起きるはずだ。
財務省の矢野康治事務次官が月刊誌「文藝春秋」への寄稿で、パンデミック禍での政策論争を「バラマキ合戦」と批判したことが話題になっている。私も「バラマキ合戦」を早くやめないと、日本の財政だけではなく「通貨システム」そのものがおかしくなるという懸念を持っている。
これは日本の財政だけの問題ではない。リーマンショック以降、世界的に超低金利の流れが続いていた上に、上記のパンデミック対策を名目にしたバラマキがグローバルに行われている。
もちろん、冒頭の3(資金の)供給が多い、だけではインフレになりにくいことは、2018年8月13日公開「異次元緩和でも日本にインフレが起こらない極めてシンプルな事情」で述べたとおりだ。
しかし、現在は4の(資源・エネルギー、さらには食糧の)供給が少ない、という要因が新たに加わっている。今のところ資源・エネルギーの高騰だけが目立っているが、食糧も含めたこれらの資源は、幅広い経済に影響を与え最終的には人件費も上昇させる。
金融緩和・バラマキは、前述のようにデフレ経済下では極めて効果が薄いから、「やりすぎ」になることが多く、インフレ期になってからその「報い」がやってくる。
今回は、リーマンショック後のマイナス金利を含む超金融緩和とパンデミック対策を名目にした「バラマキのダメ押し」が行われた後に、「金融危機」と「(供給の制約による)コストプッシュインフレ」に直面せざるを得ない。
金融危機に対しては、すでに超低金利かつインフレが到来している中で「さらなる金融緩和」で救済することは難しい。
もし、愚かにもこの状態で「危機を救うための大規模な金融緩和」や「救済を名目にしたバラマキ」を行ったら、コントロール不能のインフレを招くことはほぼ間違いがないと考える。