「日本の貧困問題を社会的に解決する」をミッションに掲げ、2001年の設立以来、生活困窮者の支援活動を展開している認定NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」。その理事長として、生活苦にあえぐ人々の自立支援に奔走するほか、日本の貧困・格差問題や社会保障制度のあり方などを発信、提言しているのが大西連さんだ。コロナ渦で食料配布に集まる人が4倍になった今、「日本という国が貧困問題にどう臨むのか、“総論”を話し合うことが大切ではないか」と、最前線から意見を寄せてくれた。
子連れで食料配布に並ぶ女性も…
昨年6月の雨の日、東京都庁の敷地内にある屋根の下で、生活困窮者への食料配布を行っていたところ、都庁職員が近づいてきました。
「使用許可をとっていないから出て行ってくれ」
これまでは黙認されていたし、通行人の邪魔にならないように配慮していたのですが、「ルールだ」といいます。そこを追い出されると、大雨の中、吹きさらしの路上で炊き出しをしなければなりません。どうしろというのか。愕然としました。

「自立生活サポートセンター・もやい」は、さまざまな理由で生活が苦しくなっている人に支援活動を行っている団体です。この毎週土曜日の食料配布のほか、一緒に解決策を考え、利用できる制度や機関につなぐ相談・支援事業も行っています。
コロナ禍の影響で、昨年春から寄せられる相談件数も食料配布に来る人数も急増しています。相談会には各回とも例年の1.5~2倍の人が集まり、食料配布は、昨年4月は1回に約120人が並んでいたのに対し、今年9月末には実に394人に上りました。コロナ禍に見舞われて1年半が過ぎた今、困窮者が減るどころか増えていることが見て取れます。
来る人の層も変化しています。食料配布には従来はホームレス状態の人やネットカフェで生活している人など、かなり厳しい状況の人が集まっていました。それが今は女性や若い人も一定数見られるようになっています。20、30代で、非正規雇用ではあるものの税金も家賃も滞納したことがないし、わずかながら貯金もしてきた。でもコロナで失業し、先が見えない。そんな人が食事やアドバイスを求めてやってきます。中には子連れの女性もいます。僕は10年以上、路上支援を行ってきましたが、路上支援の現場で子連れの人を見るのはコロナ禍が初めてで、ショックでした。そのあとも母子でくる別の方々の姿も見るようになりました。生活が立ち行かなくなった層が現実として広がっているということです。
これだけの人を民間の共助的な力だけで支えるのは不可能です。公的な支援は絶対に必要です。
しかし、都庁では食料を求めて集まった人を雨の中に追い出そうとするのです。
