第2回:農協(JA)職員が、「自爆」営業している動かしがたい証拠
「ボーナスはないものと思え」
「渉外担当になったら、ボーナスはないものと思え」。「JA兵庫西」(兵庫県姫路市)の現役職員Bさんは、かつて上司が放ったこの一言が忘れられない。
JAグループでは、JA共済連が企画・開発した商品を、全国に562(2021年4月1日時点)ある地域のJAが営業している。「JA兵庫西」で、その営業を専門にしているのは、「ライフアドバイザー(LA)」と「複合渉外」という肩書きの担当者だ。前者はJA共済の販売を、後者はそれに加えて積み立て貯金の集金や、公的年金でJAの口座の利用を勧める信用(金融)業務も請け負っている。
Bさんは、どちらの担当も経験済み。その中で、先の上司の言葉が嘘でないことを知らされることになる。下の一覧表は、「JA兵庫西」のノルマ表である。役職別に明記されているポイントがノルマだ。注目したいのは、LA(表には共済渉外と記されている)と複合渉外のポイントだけが、他と比べて飛び抜けて高いことだ。

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「LAになるとノルマが20万ポイントを超えるので、職員が数万ポイントを自爆するのは普通です。たとえば3万ポイントを自爆する場合、30代の人の分を肩代わりするとだいたい80万円。生命保険の場合、加入してもらう人が男性であったり年齢が高かったりすると100万円くらいになることもあります。なかには、6万ポイントとか7万ポイントを自爆する職員もいます。その場合、肩代わりする金額は160万円から200万円に達しますね」(Bさん)
「自爆」とは、達成できないノルマ分について、職員自ら掛け金を負担すること。まずは、自分がJA共済に入る。それだけでは足りないので、家族や親戚、続いて友人や知人にも加入してもらう。その人たちの掛け金を払うのは勧誘した職員自身。これが自爆だ。
Bさんによると、JA職員の給与は地方公務員とほぼ同じ水準だという。たとえば「JA兵庫西」の場合は、本店が姫路市に置かれているので、姫路市役所の給与30万円(平均年齢38歳)と同額ということになる。「JA兵庫西」は、夏と秋の2回に計5ヵ月分の賞与を支給する。つまり150万円。残業代などを別にすれば、年収は510万円。LAや複合渉外になると、多い人ではここから200万円が自爆で消えるのだ。