山中伸弥教授、同級生の小児脳科学者と語る「自己肯定感の育て方」

山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る(2)
これまでいくつかの書籍を刊行してきたノーベル賞科学者・山中伸弥教授だが、「子育て」について書いた​本はまだ一冊もない。どうすればわが子が山中教授のように育つのか?を知りたい全国の親御さんに届ける子育て本『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』が10月22日発売。
神戸大学医学部時代の同級生で、山中教授の「勉学の恩人」でもあった小児脳科学者・成田奈緒子医師が、山中教授がこれまで語ったことのない本音を引き出します。

親に本音を言えない子どもが山のようにいる

成田 私の両親の仲は、ね。いい状態ではなかった。昭和の時代のことなので、離婚は社会的にはまだまだタブーだった。結婚したらどんなことがあっても家庭を維持し続ける、みたいな価値観が残っていたのは、不幸だったと思う。家族のかたちを整えないといけなかった時代だった。しかも、母は結婚してから働いていないし、どうしようもなかったんだろうと思います。
山中 難しいね。
成田 その視点で見ると、いま私がみている患者さんの家庭もほぼほぼ同じような状態なのね。少しずつ内情を聞いていくと、それがわかる。半世紀以上経過しているのに、変わっていないんです。

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子どもたちは、自分の本音を絶対に出せない。思っていることを表に出せない。親に自分の本心を伝えられない。でも、そこをほぐしてあげて、親に自分のありのままを出せるようになったとき、初めて子どもたちは解放されるんですね。

みなさん表向きは整った家庭なんですけど、そんな子どもたちが山のようにいるんですよ、山中君、今の世の中には。
山中 そうなんですね。成田さんも出さなかった、隠してたって言ってたね。
成田 まだ、自分を開ける時期ではなかったんだと思います。今は本当に素の自分を出せる。誰に対してでもないけれど、ちょっと近い人たちには全部話せるようになった。
山中 いやいや。当時もめっちゃ自然体に見えたよ。
成田 そっかあ。うまいこと騙してたんや。今振り返ると、父は医者として、母は母親として世間体を保つことに一生懸命だったんだと思うの。だから、めっちゃしんどかったと思う。子どもの私もしんどかった。「ええかっこしい」は、親も子もしんどいのよ。しんどいことを乗り越えて強くなるって日本人は考えがちだけど、ええかっこしいのしんどさを乗り越えるには、それをやめるしかないよね。
山中 わかる気がするな。開き直って自然体でいるほうが楽なんだけど、そうもいかないっていう感覚もわかる気がする。

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