米国は長期的に対中抑止シフト、これがアフガン撤退とAUKUSの意味

今度は日本、台湾との同盟が最前線
渡部 恒雄 プロフィール

主軸は同盟国との関係強化に向かう

現在、世界が最も懸念する中国による台湾の武力統一への対抗策も、同盟国との連携を深化させて、中国の軍事的冒険主義へのハードルを上げるというアプローチを取ることになるだろう。

欧州の同盟国フランスの怒りを買ったことで批判された新たな米英豪による軍事協力の枠組みであるAUKUSも、バイデン政権が米国の政治的・財政的な限界を理解した上での対応と考えると、きわめて合理的なものだ。

AUKUSでは、米国が豪州に原子力潜水艦技術を供与することに合意したが、これは南シナ海と太平洋における中国の海軍力の劇的な拡大に対応して、勢力均衡を維持しようとする措置である。

実際、中国優位で進んでいる米中の建艦競争において、冷戦期の1970年代から1990年代にかけて就役した米海軍のロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦の退役時期が近づいているにもかかわらず、フランスによる豪州への通常型潜水艦売却のプロセスが大幅に遅れていた。

そのバランスを埋めるために、豪州に原子力潜水艦技術を供与して軍事バランスを維持し、豪州という地域の同盟国との協力を緊密化させ、さらには欧州の英国をインド太平洋に巻き込むという一石三鳥の狙いがみえる。

EUから離脱した英国は、今後の世界の経済成長の中心と目されるインド太平洋地域に関与するために、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)への加盟申請を行ったが、軍事協力による地域関与は渡りに船のはずだ。

 

豪州は、第1次世界大戦、第2次世界大戦からイラク戦争に至るまで米英の戦争に参加してきたが、第2次世界大戦時の日本軍によるダーウィン空襲を除けば、自国の防衛が外敵に直接脅かされる事態はなかった。

しかし中国の南シナ海の軍事化などの海軍力増強により、豪州がもはや最前線から離れた後背地で米英に協力するという環境ではなくなったことを自覚させた。

関連記事