行き過ぎたネット社会の暗い側面
インターネットを活用した匿名の暴露が芸能人や有名スターを没落に導いた事件は、今年初めにもあった。韓国芸能界やスポーツ界を席巻した「#学暴(学校でのいじめ)MeToo」騒動は、日本の読者の記憶にも新しいだろう。
思えば「#学暴MeToo」スキャンダルも、キム・ソンホのスキャンダルとまったく同様の構図で広がっていった。
今年2月10日、NATE PANに、「バレーボール選手の学爆被害者です」という書き込みが匿名で掲載された。投稿者は自分に学爆を加えた当事者の名前を取り上げなかったが、ネットユーザーは学爆加害者が韓国女子バレーボール界の看板スターのイ・ジェヨン、ダヨンの双子姉妹であるという推理結果を導き出した。
その後、この暴露文は、主流メディアを通じて大衆にも伝わり、社会的な波紋が手のほどこしようもなく広がった。双子の姉妹は韓国代表の資格を剥奪され、所属チームでの選手活動も中断を余儀なくされた。
これを発端に、ネット上には有名人から過去にいじめを受けたという多くの暴露者が登場、「#学暴MeToo」はスポーツ界を超え、芸能界にまで波及した。韓国を代表するエリートスポーツ選手や人気アイドルが十数年前に犯したいじめ事件は、かくして日本をはじめ海外にまで報道される一大騒動となった。
「ネット社会」と言われる韓国では、こうしたインターネットを活用した告発や暴露が日常と化している。
韓国のインターネット上には、同じ趣味、あるいは同じ職業群の同好会としての性格を持つ様々なコミュニティやカフェが数多く存在する。そして、ほとんどのコミュニティにはニュースや情報を共有する様々な掲示板が存在し、そこにあげられるコメントが「ネット世論」を形成している。
数十万人の会員を保有する大型コミュニティにはネタを探す目的で各種メディアの記者が常駐しており、揮発性の高い書き込みは、主流メディアを通じてリアルタイムでオフラインにも伝播される。
このため、ネット・コミュニティは、主流メディアにアプローチすることが難しい一般人にとっては、自分が受けた不当な扱いを告発し、個人的な無念を解消できる絶好の「通路」となっているのだ。