住宅ローンのために「同業他社の副業」に手を出した33歳サラリーマンを襲う「会社バレ」の恐怖
近年サラリーマンの間でブームの「副業」。コロナ禍で経済的な不安定さが増す中、ますます副業への関心が高まっている。しかし、副業を容認している企業はまだ少数派。条件付きで認めるというケースも少なくない。
しかるべき確認・手続きをしないで副業を始めると大きなトラブルに発展することもーー。社労士の木村政美氏が、企業内で起きた実例をもとに解説する。
残業代がつかない部署への異動で住宅ローンが重荷に
A沼さん(33歳・男性、仮名=以下同)は、大学卒業後IT企業の甲社に入社、プログラマーを経て現在はシステムエンジニアとして勤務している。入社以来残業や休日出勤をすることが多い職場だったが、昨年の10月、社内のシステムを管理する部署に異動してからは、これまでとは一変して業務が定時で終わるようになった。
残業がなくなり身体が楽になったのはいいことだが、その分残業代の支給がなく、ひと月分の給料は以前所属していた部署に比べると手取りで15万円も減ってしまった。

A沼さんは3年前に結婚し、1年前会社から電車で30分の場所に新築マンションを購入した。しかし、給料が下がったせいで月15万円の住宅ローンの支払いが肩に重くのしかかり、とたんに生活はカツカツ状態になった。
ある日曜日の夕方、自宅近くのスーパーで買い物をしていたA沼さんに
「A沼さん、久しぶりだね」
と背後から声がかかった。びっくりして振り向くとかつて仲の良い同僚だったB倉さん(33歳・男性)が立っていた。
B倉さんの退職後5年ぶりに再会した2人は、そのままスーパー内にあるフードコートに場所を移し、コーヒーを飲みながらお互いの近況報告で盛り上がった。その時にA沼さんが、3年前に結婚しその後子供が生まれたことや、マイホームが欲しいと妻にねだられ新築マンションを購入したこと、職場の異動で残業代がなくなり、住宅ローンの支払いが苦しい事などを苦笑しながら話した。
B倉さんは、甲社を辞めた後一旦実家に戻り家業を手伝っていたが、4年前に再び上京、その後甲社の同業他社にあたる乙社に就職し、現在はチーフシステムエンジニアとして働いていると話した。話は尽きることがなかったが、お互いにその後用事があったので1時間後に別れた。