2021.10.27

経産省が、台湾の半導体大手TSMCに「日本での工場建設」を"懇願"してきたワケ

追い込まれる日本
加谷 珪一 プロフィール

日本の現実を考えると妥当な選択

今回の工場誘致については、日本の半導体産業の復活にはつながらない、投入する税金の割に効果が少ない、といった批判の声も上がっている。確かに外国メーカーに多額の資金を税金から供与するというのは、あまりにもお人好し過ぎるとの意見が出るのはやむを得ない。だが、今回の決断はギリギリ妥当なものであると筆者は考えている。

国内では半導体産業の復活を願う声がいまだに存在しているが、現実問題としてそれは不可能である。高付加価値な半導体の設計では圧倒的に欧米企業が強く、チップの製造においては台湾勢や韓国勢が突出している。日本メーカーはどちらの分野においても太刀打ちできる状況ではなく、日本はこの現実を受け入れる必要がある。

 

国内に工場を誘致して雇用を生み出し、そこで製造される製品を国内企業が利用するというのは、典型的な発展途上国の産業政策であり、こうしたやり方について快く思わない人もいるだろう。だが、国際競争力を著しく失った今の日本の半導体産業にとって、もはや残された選択肢は少ない。

ワクチンの確保でもそうだったが、日本は世界に対して完全に買い負け状態となっており、国内では多くの製品が手に入りにくい状況となっている。カーナビやプリンターはずっと品切れが続いているし、自動車も一部のモデルでは納車が半年待ちである。このままでは日本は常にモノ不足に悩まされる国に成り下がってしまうだろう。

労働者の賃金という点でもメリットが大きい。本来であれば、サービス産業の付加価値を上げ、平均賃金を引き上げる必要があるが、それには時間がかかる。現時点では製造業とサービス業には大きな賃金差があり、地方にとって工場が建設されることは、賃金が大きく上昇することを意味している。

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