2021.10.29
# 学校・教育

「とりあえず」で就職を決める若者たちが、実はむしろ「合理的」であるといえるワケ

明確な「夢」「やりたいこと」なんかなくてもいい

日本のキャリア教育では就業について「夢」や「やりたいこと」が重視されているが、ある調査によれば、実際には約8割は「とりあえず」で就職先を決めているという。

「人生がかかっているのに『とりあえず』で決めるなんて大丈夫か?」と否定的に見られがちだが、しかし「とりあえず」志向は豊かな未来を築くために有効な人生戦略である、と経済学者の中嶌剛(千葉経済大学教授)は語る。若者の「とりあえず」志向を研究して約15年の成果を『若者の曖昧な進路選択とキャリア形成』(晃洋書房)として著した中嶌氏に、「とりあえず」とは一体なんなのか、とりあえず訊いてみた。

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不安で時間が差し迫るなか、曖昧な状態から脱するための方策

――「とりあえず」という言葉は日常的によく使いますが、結局どういうものだと捉えればいいのでしょうか。

中嶌 「不安心理」「曖昧さ耐性」「時間的要素」から捉えることができます。

まず「不安心理」。いま首都圏・関西の高校3年生を対象に1000人規模の調査をしていますが、希望進路について訊くと6月時点で8割が「決まっている」としていますが、「進学」と答えた人のうち7割が「とりあえず進学」です。十分な確信がない――これも不安心理と捉えています。

――不安がまったくなければ「とりあえず」ではなく、確信を持って行動するはずですものね。

中嶌 次に「曖昧さ耐性」ですが、これは耳慣れない言葉かもしれません。ただ、心理学では古くから用いられている概念です。どっちに転ぶのかわからない曖昧な状況に置かれたとき、耐性が低いひとはその状況を拒否したり逃れたり、無視しようとします。

逆に耐性が高い人は「どうなるかわからないんだから、やりようによっては変えられる」と肯定的に受け入れ、発奮材料にします。若者が抱く漠然とした不安のひとつに、上司・同僚・取引先などとの人間関係構築に対する不安があります。就活時点では「うまくやっていけるかな」とモヤモヤしているけれども、職場に入れば状況は確定して曖昧さはなくなります。

――「とりあえず就職」と行動することによって曖昧な不安を乗り越えようとしていると。

中嶌 三つめは「時間的要素」です。たとえば就活生Aさん、Bさんがいたとして、周囲ではもう内定が出ていて焦っている。Aさんは「いち早く内定取らなきゃ」と動く「現在志向」。Bさんは新卒では本命に入社できなさそうだけど将来的につながる可能性がある会社にいったん就こうという「未来志向」。二手に分かれますが、いずれも時間に限りがあり、差し迫る中での心理・行動です。

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