街頭演説中に勝手に体を触られた、握手した手を離してくれない、SNSで付きまとわれる、夜中に無言電話がかかってくる……これらは女性議員のハラスメント調査を行う中で頻繁に聞く被害内容です。令和2年度に内閣府が地方議員に対して実施したアンケート調査では、選挙や議員活動中に有権者や支援者、同僚から何らかのハラスメント被害を受けた経験があると回答した女性議員は57.6%に対し、男性議員は32.5%でした。

私は女性議員だけでなく男性議員にもハラスメントに関するインタビュー調査を実施していますが、内容の多様さや量など、女性の方がケタ違いに多くあることが、現場の声からも明らかになっています。女性議員を増やしたいという思いから、大学院で「女性議員に対するオンライン・ハラスメント」の分析研究を行い、その研究をもとに、女性による女性議員・候補者のサポート団体Stand by Womenを立ち上げました。この記事では、私が女性議員のハラスメント研究を行っている理由と、なぜ団体を立ち上げるに至ったかについてお伝えします。

2021年10月14日、「女性リーダー支援基金~一粒の麦~」という賞の授与式が東京都内で開催された。これは公益財団法人パブリックリソース財団が将来の女性リーダー育成のために100万円の基金を授与するというもので、審査委員長の上野千鶴子さん、審査員の大崎麻子さん、白井智子さん、浜田敬子さんによって審査され、5名の受賞者が決定。その中のひとりが、「Stand by Woman」、女性の議員たちを支える活動を行っている濱田真里さんだ(濱の字は本来はウ冠に眉)。そもそもなぜこのような活動が必要だと思ったのか伝えてもらった。
 

きっかけは「海外で働く女性」の取材

私は大学院に入る前、7年ほど海外で働く日本人の方たちの取材をしていました。学生の時から海外で働いてみたいと思っていたのですが、なかなか現地で働く日本人女性の体験談を見つけることができなかったため、自分で取材をはじめたことがきっかけです。最初は人づてにインタビュー相手を探し、サイトを知っていただけるようになってからは取材相手をご紹介いただくことが増えていきました。

出会った多くの女性たちから共通して聞いていたのが、日本で働くことの生きづらさに関する話です。会社で自分の能力が適切に評価されなかった、海外駐在をしたいけど、女性だからいつか結婚してやめるだろうと候補に入れてもらえないから辞めてこっちにきた、自信を失う言葉をかけられる……など。ひとりやふたりではなく、大勢から同じような話を聞いたため、これは日本社会の構造に潜む問題だと認識するようになりました。そして、日本人女性が置かれている社会構造についてより専門的に学びたいと思い、お茶の水女子大学大学院のジェンダー社会科学専攻に入学したのです。

海外で生き生き働く女性たちの話を聞くつもりが、日本の現実を知らされる経験となった Photo by iStock

大学院では様々なテーマについてジェンダー視点から学び、その中でも政治とジェンダーをテーマに選んで研究を行いましたが、学べば学ぶほど社会の見え方が大きく変わりました。気づいていなかったバイアスに気づいたり、自分の中でもやもやしていた事柄や体験が言語化されたりして、大げさかもしれませんが、自分の中身が入れ替わったのではないかと思うくらい大きな変化を実感しました。

数ある日本のジェンダー問題の中でも、私が特に興味を持ったのは政治分野でした。なぜなら、女性の社会的地位向上のためには意思決定層の女性を増やすことが不可欠であるにもかかわらず、日本では政治の場に女性の数が圧倒的に少ない状況だったからです。世界経済フォーラムが毎年発表する、各国における男女格差を数値化した「ジェンダーギャップ指数2021」では、日本は国会議員や閣僚の女性割合が低いため、政治指標の順位は156カ国中147 位です。

政策決定の場に女性が少ないということは、女性にまつわる政策が後回しされたりそもそも議題に上がらなかったりする可能性が高まります。政治というのは遠い世界のようで、実は私達の身近な生活に紐付いたテーマを扱うものです。女性の議員が増えることで、結果として社会のジェンダー平等が推進され、誰もが生きやすい社会に繋がるのではないかと考えました。