家族や周りに摂食障害を疑う人がいたら……
では、身近な人を摂食障害に向かわせないために、家族や周囲の対応として適切なことはあるのだろうか?
「そもそもの大前提としては、まず誰に対しても身体的特徴をあげつらって卑下したり揶揄したりして本人の評価を下げること、プレッシャーになることを言わないことです。『体型や外見で人を評価すること自体がよくない』という教育が日本では十分になされていないことも問題だと思います。テレビなどを見ていると、体型はもちろん、チビとかハゲとからかうシーンがよくあります。でも、そうして自己評価を下げるようなことを親や周囲に言われて、ハッピーになる人はいないですよ。
たとえば、子供が急に太ったり・痩せたとき、食行動異常が感じられたときなどは「どうしたの、何かあったの?大丈夫?」「嫌なことがあって食べすぎちゃうの?」と心配したり、指摘することは、家族としてあることだと思います。むしろ、親が子供の変化に対して何も気づかない・向き合わないということは、それはそれで問題だとも言えます。
もしも子供がおかしな食べ方や行動をしていたら、そんなことはやってはいけないと親が叱るステップが有効な場合もあります。お説教されて異常を自覚し、やめるというパターンもあるからです。
ただ、病院に来る方というのは、それがうまくいかなかった方たちです。プレッシャーを与える過干渉の親御さんと悪い雰囲気になるお子さんの状況が、診察室で再現されることもあり、そうなると『この雰囲気で美味しくご飯、食べられますか?』ということになります。
そして、『今までのやり方でうまくいかなかったですね、じゃあどうしましょうか』ということを一緒に考えていくことが大事なんですね。ですから、摂食障害になったら周りはこうした方がいい、と一元的に言えるものではないんです。その患者さん自身の状況に向き合うことが必要です」(山田医師)
摂食障害の方に話を聞くと、自分の体に違和感を抱いたり、痩せなければと思ったきっかけは誰かからの体型指摘だったということも多い。例えば、太った体型に対して「指摘すれば本人が痩せる気になるから」と一方的に侮辱するような人もいるが、いちいち言わなくても、体型の変化は本人が1番よく分かっているだろう。容姿の特徴をあげつらって笑いにすることも、すでに時代遅れの価値観になりつつある。本当に相手の体調などが心配なら、一方的にああしろ、こうしろと説き伏せるのではなく、「最近何か生活で変わったことはある?」というように寄り添うことが必要なんだと思う。
「摂食障害は、単純に体重が戻ったり、食べられるようになったらハッピーということではなく、そもそも『痩せなきゃいけない』と思うしんどさに問題があります。診察を進めるうちに、実は友達が居なくて学校で誰とも喋らない子や、休み時間はトイレにこもってるような子だということが明らかになることもあります。でも、それを親に話すことができない。(親御さんと話し合った上で)今の学校に行かなくてもいいよ、と伝えるだけで、もう頑張らなくていいんだ、と感じて食べられるようになった子もいます。そんなに辛いなら今の生き方のレールから降りていいよ、違う道を探していいよ、と伝えると楽になるんですね。

人生を生きるのは、患者さん自身なので、その問題に本人が取り組めるように、周りは環境を作ること、悩みながらも前進する本人を褒めることが大切ですね。失敗を咎められるより、失敗しても頑張ったじゃんて言われた方がうれしいですよね。治療に向けて現実を指摘することが必要な時もあります。でも、少しでもうまく行ったところを見つけてあげる、褒めることが大切です」(山田医師)