不安な心、満たされない心が引き金になることも

さらに、山田医師はコロナ禍の影響をこう指摘する。

「コロナ禍で人との関わりが無くなり孤独に過ごさなければいけなくなった時に、自分について考える人が増えました。1人の状況を楽しめる人もいるのですが、自分に対してネガティブなことを考えていた人が、休校中や自粛期間中に、『今までの自分を変えよう』とダイエットするようになったんです。

2020年に緊急事態宣言が最初に発令されたのは春でした。中高生や大学生にとって、クラス替えや入学などで環境がリセットされるときは、一から自分を作り直す良いチャンスでもあるので、タイミングが合ったんです。そうして休校期間の終わりが見えない中でダイエットを続け、やっと学校が始まった頃に摂食障害を疑われて病院に連れてこられたケースが多くありました

photo/iStock

中高生の児童思春期は、本来なら友達など人との間で揉まれながら、自分の出来ること・出来ないこと、どんな人になりたいのかを考えたりして成長していく時期なのですが、休校で人とのコミュニケーションが無くなり家で1人過ごせとなると、そういった成長の機会を奪われ摂食障害に陥いりやすくなってしまったとも推測できます」

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私が極端なダイエットを始めた高校生の時も、まさにハッピーではない状況だった。周りの友達は、スリムで可愛くて、いつも恋人がいてオシャレな服を着こなし、青春を謳歌しているような印象だった。一方でぽっちゃり体型だった私は、幼少期から常に劣等感があり、自分には何の取り柄もない気がしていた。恋愛もうまくいかず、自分が着れるサイズの服がお店に売っていないので仕方なくメンズの服を着ていたこともある。

テレビを付ければ、健康番組でダイエットに成功した女性たちが涙を流して感動し、周囲から賞賛される様子がよく放送されていた時代だった。太っている限り、社会の中に自分の居場所が無いような、孤独感を感じていた。だから、好意のある男性に「痩せて欲しい」と言われた私は、鬱屈とした人生をダイエットで変えようと思った。そして体重を減らすことにのめり込むうちに摂食障害に陥っていった

摂食障害の悩みを抱えていた時期の吉野なおさん。写真提供/吉野なお

山田医師が言う通り、痩せたい気持ちに囚われる時は、今ある状況からなんとかして抜け出したい、ハッピーな自分に変わりたいという思いの反映なのかもしれない。

後編では、摂食障害の治療法や周囲の接し方などについて、引き続き山田医師にお話を伺っていく。

今回お話を伺った山田恒医師と、吉野なおさんが登壇する市民講座が開催される。オンラインで全国どこからでも視聴可能。ぜひ、参加してみては。

第24回 日本摂食障害学会学術集会 市民公開講座
『痩せているって、本当に良いこと?〜ダイエットの不都合な真実とメディアとの関係について、専門家と経験者が話し合います〜』

10月31日(日)14:30〜16:00(Zoomウェビナー開催)参加費無料・事前申込不要。どなたでも視聴いただけます。詳細はホームページをご覧ください。
https://med-gakkai.jp/jsed2020/
兵庫医科大学精神科神経科学講座では、痩せすぎモデル問題と摂食障害に関するwebアンケート調査実施中
アンケートにご協力をお願いいたします。(無記名・所要約5分)
https://forms.gle/2L52aviUWadJqBnw8