日本テレビ系で毎週土曜日に放送されている受験ドラマ「二月の勝者」。柳楽優弥さん演じるスーパー塾講師・黒木蔵人が原作漫画とそっくりで、エピソードもリアルと話題だ。柳楽さんのインタビューを公開したところ、「二月の勝者を心の支えに受験した」「ドラマを楽しみにしている」という声が寄せられた。

コミックエッセイ『ツレがうつになりまして。』の作者・細川貂々(てんてん)さんの長男・ちーと君は、高瀬志帆さんの漫画『ニ月の勝者』が受験期の友達だった。ちーと君は小学6年生の9月に私立中受験を宣言し、ツレ(パパ)の「親塾」で追い上げて第二志望の中高一貫校に合格した。筆者は、細川さん夫妻の取材を通して、赤ちゃんの時からちーと君の成長を見守ってきた。今回は、漫画家ファミリーの突撃受験ストーリーを紹介する。
〇受験当日、雪の中で校門前に立ち、パニックになった生徒に「大丈夫」「水溶液は出るけど水蒸気は出ない」と即答する黒木先生
〇加藤君が好きな電車を眺めるシーン
〇文化祭で電車のジオラマに加藤君が見入るシーン

「運動会の組体操が嫌!」受験を決意
細川さんは、ツレがうつ病になった時の経験を描き、多くの読者に共感されている。他にも、高齢出産・子育ての体験記、発達障害をめぐる当事者研究などを、温かい絵柄のコミックエッセイで発信してきた。宝塚歌劇団好きが高じて、千葉県から引っ越し、兵庫県に住む。
長男・ちーと君の受験体験を描いた『なぜか突然、中学受験。』(創元社)では、『二月の勝者』を支えにしたというエピソードも紹介している。小学生の頃、ちーと君は、ゆるやかに楽しく勉強する塾に通い、受験はしないと言っていた。なぜ突然、受験することになったのか、細川さんに聞いた。

「小学4年生から、学校の勉強についていけるように、近所の補習塾に通っていました。それまで習っていた英語をやめて、うちでゲームとテレビばかりではちょっと…と思ったのもあります。
毎年、学年が上がるタイミングで、『受験どうする?』って本人に聞きました。そのたび、『受験はしない』と。6年生になる時は、周りに受験する友達が多くて、夜10時ごろまで塾通いをするのを見て、『しんどそう、受験したくない』と思っていたようです」
「きっかけは、6年生の運動会でした。組体操をやりたくないと。もともと、ちーと君は運動会は苦手で、毎年ストレスだったんです。近くの公立中でも、組体操をしなきゃいけないと知って、組体操のない私立中に行きたいと言い出しました(編集部注:コロナ以降は公立校でも組体操は基本的に行わなくなっている)。
それだけではなくて、以前から、小学校の、全体に合わせなきゃいけない雰囲気に、ストレスをためていたのでしょう。5年生の担任の先生が、『根性だ!みんなで頑張ろう!』みたいな感じで、女子には人気がありましたが、男子たちは引いていました。6年生の担任は、柔軟な先生だったんですけどね。
同じマンションの子も、一緒に遊んでいた子も、みんな受験する。『自分だけ公立でいいの?公立中でも合わせなきゃいけないの?』と改めて考えた時に、組体操がきっかけになって、思いが弾けたのかもしれません」