偏差値28、合格率0%からの受験

突然の受験で、志望校はどのように決めたのだろうか。

「家から近い学校という視点で、決めました。第一志望は、知人によさそうと勧められていた学校です。説明会で質問したところ、組体操もないということで。
ところが、受験する1年ぐらい前から、そこが厳しい受験校に変わり、偏差値も急に高くなっていたんです。第二志望は、プレテストで行ってみて、家族みんなの印象がよかった学校に決めました。先生が、どんな授業をするかも説明してくれました。二月の勝者の黒木先生も、併願校は大事だって言っていたよねって」

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中学受験の準備スタートは年々、低年齢化し、内容も難しくなっている。ちーと君のように6年生の9月に受験を決意して合格するというのは、簡単にまねできることではないだろう。

「もちろん、不安と緊張の連続でした。入試が1月で、準備期間が9月~12月の4ヵ月しかありません。初めて、模試で合格判定が出たのは10月。偏差値が28で、第一志望の合格率は0%でした。ショックでしたが、YouTube視聴やゲームを禁止し、ちーと君も『あきらめない』と言って毎日勉強するようになり、成績は上がっていきました。

『二月の勝者』に、鉄道好きの加藤君が出てきます。ちーと君も、小さい頃は鉄道が大好きで、日本地図は頭に入っていて、駅名も漢字で書けました。好きなこと、自分が決めたことはやる、あきらめない性格なんです」

『なぜか突然、中学受験』より (c)細川貂々/創元社

第一志望は不合格だったけど

2回目の模試では合格率が20%。受験用の顔写真を撮影したり、インフルエンザの予防接種を家族そろって受けたり、準備を進めた。

「ちーと君がつまずくと、ツレが『受験やめる?』と聞き、ちーと君が『やめない』というくり返しでした。12月の模試では、第一志望の合格率が70%ぐらいになったんです。

勉強が苦手だと思っていたちーと君は、頑張ってみたら意外にできることに気づき、でも時間はないし、思うようにいかなくてもどかしい。ツレと、『つらかったら、もともと行くつもりだった公立中に進路を戻せばいい』と話していました。

私は、年末の親塾で追い込めば、いけるんじゃないか、と期待しました。結果的に、冬休みは勉強したけれど、お笑い番組を見たり、ゆるんでしまいました。塾に行っている子は、講習があり、ライバルや先生がいます。ちーと君は仲間もいないし、皆と一緒に盛り上がる機会がなく、受験は後がない、ということも実感できませんでした」

そのまま、入試本番に突入した。

「ツレが、綿密な併願スケジュールを作りました。午前はこの学校、午後はこの学校を受ける。付き添いの夫婦分担はこうする、疲れるから、間にちーと君の昼寝の時間もとるとか。

最初に受けた第一志望校は、不合格でした。本人も、受けてむずかしかったと言っていました。覚悟はしていたけれど、苦手な分野ばかり出た、書けなかった、と。 

いきなり受験を決めたとはいえ、ちーと君はショックを受けました。今は、ネットで合否がわかります。入試の翌日に結果が出て、すぐに、次に受ける学校の願書を出しに行きました。

ちーと君は気持ちを切り替えて、その日からまた勉強を始めました。自分の部屋で、できなかったところを復習していました。無事に、第二志望と、第三志望の学校に合格しました」