『二月の勝者』が友達代わりだった
細川さんが漫画を描き、ツレが裏方や家事・育児を担ってきた。受験勉強も、細川さんは見守るポジションだった。二人がケンカしたり、パパがダラダラしてしまうちーと君にキレたりすると、細川さんが「まあまあ」「よしよし」と間に入った。
受験仲間がいなかったちーと君にとって、『二月の勝者』のコミックスが友達の代わりだったという。
「塾に行っていないから、仲間がいない。参考になる本があればと、ツレが検索して見つけました。6年生の11月に知り、一気に取り寄せて読んで、ちーと君に読ませました。『こういう子たちが、受験がんばっているよ』と言って。ちーと君は、真剣に何度も読み返していました。とてもリアルだし、こんなに本音を書いていいのかな、塾の裏側を知ってショックを受ける人もいるのではないかと思いました。
ちーと君は、電車好きの加藤君を見て『自分と同じだな』と思い、加藤君が鉄研のある学校を目指して成績が上がった場面に、励まされたのではないかな。『二月の勝者』の作者・高瀬志帆さんと私は、実は同じ漫画雑誌でデビューしているんです。ツレは、受験塾で得られる知識や戦略の立て方、受験の持つ意義を教えられ、ちーと君は緊張感や仲間意識を学びました」
細川さんが最初に『二月の勝者』を読んだとき、衝撃を受けたのは、「黒木先生が2月の入試の日、学校の前で雪の中、生徒を待って立っているシーン」だという。
「ここがわからないとパニックになっている違う塾の生徒に、『水溶液は出るけど水蒸気は出ない、大丈夫』と即答できるところが、プロだなと思いました。こんな先生なら、子供を託してみたいと思いました。
ツレは文化祭のシーンに共感していました。私たちも、第一志望の学校の文化祭に行った時に鉄研のジオラマを見たこともあり、学校の雰囲気や本質がわかるからいいよねと」