2021.11.08
# 企業・経営

独学で夢だったお店をオープンしてみたら...?50代からのセカンドライフ「理想と現実」

仕事に家事、そして育児とめまぐるしい日々を送るなか、ふと「小さな雑貨店やカフェでも開いてのんびり生活したい」という思いがよぎったことはないでしょうか? おそらく多くの人が似た経験があると思いますが、実現させるのはほんの一握り。資金や労力、そして自分自身で作り上げた「限界」や「恐怖心」といった壁に阻まれてなかなか動けないというパターンがほとんどではないでしょうか。

そんななか、さまざまな壁を乗り越えて見事に夢を実現させたのが、英国情報誌「英国生活ミスター・パートナー」の 編集長および出版社の社長として精力的に活動してきた井形慶子さんです。彼女の近著『年34日だけの洋品店 大好きな町で私らしく働く』には、東京・吉祥寺に洋品店「吉祥寺よろず屋The Village Store」をオープンさせるまでの経緯が克明につづられています。

本書がよく目にするスローライフ賛美本と一線を画すのは、これまでの生活を完全に捨てるのではなく、うまく折り合いをつけながらセカンドライフをスタートさせるという発想で書かれている点。したがって、心地よい面だけでなく生々しいエピソードもつづられていますが、そのリアリティに共感し、かえって勇気をもらえるという不思議な魅力を放っています。

店舗経営に限らず、自分らしいセカンドライフを思い描いている人にとって井形さんの行動や考え方は大いに参考になるでしょう。今回はその一部をご紹介します。

 

夢に向けて一歩前進させてくれた吉祥寺の「謙虚」な人気店

「吉祥寺よろず屋The Village Store」の店内の様子

自らこだわって企画した英国製品を実店舗で売りたいと願っていた井形さんは、出店するなら東京屈指の人気の街・吉祥寺と決めていました。それは20年以上慣れ親しんだ場所だから、という以外にも理由がありました。

「当時は現役社長だったし、従業員の生活を背負ってわき目もふらず全力で走っていた。そんな私が夢に浸れるのは、唯一、地元吉祥寺を散歩して店をのぞく時間だった。けたたましい家電量販店や、人の多い駅ビルが苦手な私は、吉祥寺の東急百貨店の裏通りや井の頭公園に続く七井橋通りなどの商店街を好んだ。そこには私が20代の頃から変わらず営業している洋品店や雑貨店があり、訪ねるだけで心が癒された」

そんなある日、吉祥寺にひっそりとたたずむ小さな雑貨店との出会いが井形さんの夢を後押しします。そこは女性オーナーが一人で営む個人商店で、彼女の審美眼が光る品揃えに井形さんは強く心をつかまれます。しかし、それ以上に井形さんを魅了したのはオーナーの人柄でした。

「『昨日まで祖父の具合が悪くて実家に戻っていたんです。何だか久しぶりに故郷の風景を見たら、いろんなことを考えてしまいまして』。これまでたくさんの店を巡ったけれど、こんな挨拶は初めてだった。一瞬たじろいだが、店主は穏やかに話し続ける。すごい人だと思った。やがて私もふるさとのことを話し、その時間はとても楽しく、心に染み入った。手ぶらで帰るのも気が引けたので、目についたオリーブ石けんを買った。もしかして、男性が飲み屋へ出かけ、ママさんと話すために喜んでお金を使うのは、こういう会話に飢えているからなのかと思った」

「常連さんも多いその店では、私の前に入店していた女性が複数の商品を買い、3万円近く支払っていた。『すごい人気ですね』と店主に言うと、『私はお店しかできませんから』と恥ずかしそうに返された。何と謙虚な人だろうか」

オーナーの醸し出す独特な空気のせいでしょうか。井形さんはあるチェーン雑貨店で見かけた商品をその店でも目にしますが、まったく別ものに見えたことに衝撃を受けます。

「あの店主の息がかかったセレクトなら、たとえ100均の大量生産品ですら特別なものに変わる。まやかしのようだが、小商いの深層に触れたような大きな気付きだった。その店に足繁く通い詰めたことで、私は店を始めるに必要なたくさんのことを学んだ」

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