柳楽優弥さんがカリスマ塾講師・黒木蔵人を演じるドラマ『二月の勝者―絶対合格の教室ー』(日本テレビ系土曜日22時~)の放送を機に、改めて「『二月の勝者』に救われた」という人たちの声が出ている。その中の一人がコミックエッセイ『ツレがうつになりまして。』の細川貂々さんだ。細川さんが息子さんの小学6年9月からスタートしたという中学受験についてのインタビュー記事公開に合わせ、細川さんが中でも好きなエピソードをご紹介する。

期間限定(2021年11月12日23:59まで)でそのエピソードの無料試し読みも実現。合わせてぜひお楽しみいただきたい。

マンガ/高瀬志帆 文/FRaUweb

11月6日放送の4話の1シーン。中学受験に対して両親の意見が異なる家庭が登場する (c)NTV

中学受験は「子供に向き合うこと」

中学受験をするかいなか。
小学校4年生になると、いや3年生の終わりになると、そんな風にざわつき始める。受験するのなら4年から塾に行かせないとだめだろう、となんとなく思っている人が多いからだ。

しかし、現在ドラマ化している高瀬志帆さんの『二月の勝者―絶対合格の教室―』を読むと、中学受験というものは「いつから始めなければ“ならない”」というものではなく、その子供がどんな子なのか、何が好きなのか、どう生活したいのかと、真正面で向き合うことがなにより重要なのだと感じさせられる。向き合ってはじめて「こうしたら子どもが生き生きできる」ことが明確になる。中学受験で生き生きをさらにバックアップできそうだと思えばこそ、まっすぐにそこに向かっていけるのだろう。

これは中学受験に限らず、すべての子育てにも共通して言えることだろう。だからこそ、中学受験をする&した家庭のバイブルともいわれる『二月の勝者』が、受験をした&しない子どもがいる&いない関係なしに人気を集めているのだ。

さて、その「『二月の勝者』が中学受験の救世主になった」というのが、細川貂々さんだ。『ツレがうつになりまして。』をはじめとしたコミックエッセイで大人気の漫画家の細川さんは、現在ツレと息子のちーと君とカメ4匹とカエル1匹と暮らしている。そんな細川さんは著書『なぜか突然、中学受験。』にも記しているように、ちーと君が小学生6年生の9月になるまでは中学受験をする予定はなかったのだという。小6の9月に「中学受験をしたい」となっても、多くの受験塾はそこから新規生徒を受け入れない。だからちーと君にとっては『二月の勝者』が受験仲間のような存在だった。

中でも細川さんに響いたというのが、ドラマでは第2話のエピソード、原作だと第1集5~7講に登場する。鉄道オタクの加藤君の話だという。

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受験は「勉強ができる子がするもの」ではない

加藤君は、新人講師の佐倉麻衣(ドラマでは井上真央さん)が担任する、「Rクラス」に所属している6年生。Rクラスとはいわゆる「落ちこぼれ」と言われる子たちが集まっているクラスで、佐倉が「何か質問ある?」と聞いてもなにも返ってこない。授業後に質問したくて行列ができるΩ(オメガ)クラスとは対照的だ。

「勉強が苦手な子まで受験するのって、正直どうなんだろうね」

ずっと公立で育った佐倉は、そんな思いも抱いている。
中でも、授業中にいつもよそ見をしている加藤君のことは気になって仕方がなかった。実は自分が「デキの悪い子」という自覚があった佐倉は、自分が数学で一度わからなくなったとき、解けないでいる白紙の答案用紙を見回りの先生に見られないように筆箱で隠したりもしていた。
「…ああいう思いを、あの子がいましてるのかと思うと、何かほっとけなくて」

しかしそんな佐倉に黒木は言う。
「上位校合格の見込みのない生徒には、夢を見させ続けつつ、生かさず殺さず、お金をコンスタントに入れる『お客さん』として、Rクラスには『楽しくお勉強』させてください」

たしかに、「Rクラスに一生懸命になるな」黒木はずっと佐倉にそう言っていた。
「黒木先生には、勉強のできない人の気持ちが、わからないんですね…!」

『二月の勝者-絶対合格の教室-』(c)高瀬志帆/小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中

この時は思わず反発する佐倉だが、のちに、黒木のこの言葉の本当の意味がわかってくるのだ。
「本当に勉強のできない子」は一人もいないということ、勉強ができるというのが必ずしも御三家に行く、上位校に行くことを意味するのではないということ、中学受験は決して「勉強ができる子」だからするというものではないということが……。

細川さんに響いた理由は

佐倉が気づいた加藤君の「よそ見」の理由、それは「大好きな鉄道が走る時間だから」だった。
「他にとことん好きなものがあるなら受験は辛いだけじゃないですか。勉強に身が入らないほどの好きなことを我慢してまで、向いてないこと辛いことを続ける必要ってあるんですか?」
しかし黒木は言うのだ。
「他に好きなことがある子ほど、受験をやめなくていいんですよ」

『二月の勝者-絶対合格の教室-』(c)高瀬志帆/小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中

細川貂々さんがどのように『二月の勝者』に救われたかということは、なかのかおりさんによる細川さんインタビュー記事「二月の勝者に救われた…「ツレうつ」家族・合格率0%から突破した「親塾」受験物語」に詳しいのでそちらに譲るとして、加藤君のエピソードは、受験に限らずとも「好きを大切にする素晴らしさ」を教えてくれる。そして「好きを大切にする手段のひとつ」に中学を受験するという選択肢もありうるとわかってくる。

中学受験は当然お金もかかるもので、だれもがやらなければならないものでもなければ、できるものでもない。
ただ、「中学受験をさせるのは辛いこと」「ただ我慢をさせること」なのかというと、そうとは言えない。例えば将来オリンピックに出場したいから、そのスポーツに強くなりたいからこそ、筋トレに励むように、自分がやりたいことに向かってする努力は、楽なはずはないが、「ただ辛いもの」ではない。希望していないのに無理やりさせられる努力はただ辛く我慢を強いられることだけれど、自分が目指す場所に向かう努力はその子を大きく成長させる
そういう根本のことを、『二月の勝者』は教えてくれるのである。