兵役があるから就職は20代後半になることも
私は大学時代に兵役を2年、日本へのワーキングホリデーを1年経験しているため、合計で3年休学しました。卒業したのは26歳の時ですが、韓国では卒業の遅れが就職にマイナスに働くことはありません。
韓国では、従業員を募集する際に「軍畢者(グンピルシャ)に限る」という条件をつけるところが多いです。これは「兵役を終えた人」という意味です。韓国ではバイクで出前を届けるアルバイトが盛んですが、やはり採用の条件に「軍畢者」と書かれています。もちろん一般の企業もそうです。兵役を終えてこそ一人前という意味もあるでしょうが、要は「せっかく仕事を教えたのに、すぐに軍隊に入られたら困る」ということだと思います。
男性は軍隊に行くので誰もが就職するのは、20代半ばを過ぎた年齢になりますし、女性も留学したりTOEICの勉強をしたりで休学するため、24~25歳で卒業してから就職を考えるのが一般的です。ちなみに日本では大学在学中に就職活動をしますが、韓国でそれをするのは専門学校生くらい。大学生はもっと遅いです。
むしろ休学をせずに22~23歳ですんなり卒業してしまうと、「なんで留学しなかったの? 家にお金がなかったの?」「向学心がないのかな?」と思われる可能性すらあります。なぜなら韓国は猛烈な競争社会。一流企業に就職するためには大卒は当たり前で、それもソウルの名門大学でないとダメ。しかも留学していないとダメ。留学先もアメリカの大学じゃないとダメと、とにかくハードルが高い。なので皆、お金を借りてでも留学します。
余談になりますが、現在韓国で人気の高い留学先はアメリカとシンガポールです。韓国はずっとアメリカの真似をしてきた国なので、やっぱり人気があるんですよね。シンガポールは英語と中国語が使えて、IT企業も集まっている。物価も高いし、そこで暮らすことでいろいろ学べるよねというイメージがあります。
ただ、海外留学などが過熱しすぎ、就職の形にも変化が出てきました。昔は就職の面接で親の仕事について尋ねたり、家庭環境をチェックしたりしていたのですが、今は差別につながるとして、そういうことはやめてブラインド面接をしようという流れになっています。でも、履歴書で留学経験の有無を見たら一目瞭然なので、あまり意味がないともいえるのですが……(笑)。
後編「韓国兵役のいじめや体罰。韓国人YouTuberが語る『D.P. -脱走兵追跡官-』のリアル」では、『D.P. -脱走兵追跡官-』で描かれた体罰やいじめの問題、韓国人にとって兵役とはどういうものなのかを続けてジンさんに伺います。
構成・文/上田恵子
今回の取材内容をジンさんがわかりやすくYouTubeでも配信中です!
こちらも合せてチェックしてみてください。