2021.11.17
# 戦争 # 日本

異能の将校・石原莞爾の世界最終戦争論と「一夕会」

関口宏、保阪正康のもう一度! 近現代史(2)
関口 宏, 保阪 正康 プロフィール

「世界最終戦争論」

関口 その二葉会が発展して一夕会になったんですね。

保阪 彼ら一夕会はまず、人事の刷新を求めます。藩閥中心の人事を廃することを求めたんですね。そして二つ目に、満蒙問題の総合的な解決を求めた。満州を中国と切り離して独立させよと。それを自分たち改革派が中心になってやる、ということですね。だからその意味でも河本大作はよくやったということになるわけです。

三つ目に、陸軍の指導者として、荒木貞夫中将、真崎甚三郎中将、それから林銑十郎中将といった人たちを担ぎ、我々はそれを支えていこうと決する。

関口 なかでも一夕会メンバーの一人の石原莞爾は、この年7月に満蒙問題解決案を示します。「満蒙問題の解決は日本の活くる唯一の途なり」としています。

石原莞爾

少し前までは日本は主権線を守ったうえで、利益線をなんとか安定させないと安心できないという考え方でしたが、そこから一気に「活くる唯一の途」になってしまった。

保阪 石原莞爾は満州を利益線と捉える考えとは少し違うんです。

石原はある一つの信念を持っていまして、人類は最終的に東洋文明の代表である日本と、西洋文明の代表であるアメリカが戦争をし、その戦いの勝者が決して、その後人類は戦争のない平和な時代をつくるという「世界最終戦争論」です。

 

関口 石原が提示したこの考えを、軍部は支持したんですね。

より細かく見ていくと、東洋の覇者日本と、西洋の覇者アメリカによる最終戦争は完全な殲滅戦で、一挙に決戦に持っていくようなものになるだろうと予測しています。その開戦時期は、日本が東洋文明の中心的地位に立ち、アメリカが西洋文明の中心に立ち、航空機の無着陸世界一周が可能になるときに起こると。つまり、飛行機中心の戦争を予想しているわけです。

最終戦争に勝ち、東西両文明の統一と恒久平和を実現して人類を救済するのが日本の使命なのである、としています。

保阪 石原は昭和の陸軍では珍しい理論家と言っていいと思います。現に戦後、論文、講話などをまとめた8巻の著作集が出ている。旧軍人で著作集が出ているのは彼だけです。

石原の著書『戦争史大観』中に掲載された図版

軍のなかでも石原を尊敬し、私淑する軍人は多かったのですが、東条英機とは考えが合わず、口も利かない関係でした。石原は戦後、東京裁判に証人として出廷した際、検事団に「あなたは東条と思想的対立があったようだが」と問われて、「そんなものはない」と否定しています。なぜなら自分には思想があるが、あいつにはないじゃないか、と。

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