2021.11.17
# 銀行

新生銀行の本当の「敵」は、SBIなのか…?「TOB攻防」から見えてきたもの

「登場人物」たちの立場を整理する
三ツ谷 誠 プロフィール

財政界の大物たちが織りなす「絵巻物」

まず、菅前首相とSBIホールディングスの北尾社長の関係、また北尾氏がTOB成立後に新生銀行に送り込む内諾を得ているのが、地銀再編を強く推進しようとしていた元金融庁長官の五味廣文氏であること。

逆に新生銀行の工藤社長がマネックス証券の松本大氏と東大の同期であり、かつゴールドマン・サックス出身者が新生銀行サイドに数多い(松本氏も含み)こと、更には岸田首相がまさにその旧長銀のOBでもあること。こうした政財官の大物たちの織り成す絵巻物としてこのイベントを眺める記事も多く見られている。

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筆者もそうした人間の感情や思惑の織り成すドラマが嫌いではないし、個人的には野村證券の事業法人部をそのキャリアの基盤とするSBIの北尾氏と、第一勧銀を振り出しとしながらも、みずほ証券でやはり事業法人部を経験した、共に「事法マン」の、つまりは投資銀行家の二人の社長、二人のプロが、この件にどう向き合うのか、凌ぎ合うのか、そこにはとても強い興味を持っている。

アウトサイダーの筆者は外部から今回の買収劇を記すほかないが、まず「敵対的買収」という言葉が、誰が誰の敵対者なのか、から整理しておこう。

買収者、この場合のSBIホールディングス、は誤解の多い話にはなるが、新生銀行の現株主にとっての敵対者ではない、逆に彼らは彼らが思う「無能で無責任な」現経営者を排除することで、新生銀行が本来そうあるべき企業価値を実現させていこうとする現株主にとっての味方、救世主なのだ、と考えることも可能だ。

 

もちろん、それを判断するのは現株主であって、本件については、買収後、当面は上場を維持しても政府持ち分とSBIホールディングスの持ち分の合計が90%を超えた段階でのスクィーズアウト(残る株を買い上げ、上場を廃止すること)が想定されている以上、現実的に提示された買取価格2,000円がそれぞれの株主の期待する株価から推して妥当なのかどうか、を判断するということになる。

2021年11月4日時点で1,865円の新生銀行株価に対して、12月8日、延長されたTOB期間の最後の日の株価、若しくはそれ以後、それぞれの尺度で想定していた株価、と比較し、そこで2,000円で手放してもいいかどうか、その判断はそれぞれの株主に委ねられており、そこには自由もあるし、敵対性はない。

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