台湾に米軍「精鋭部隊」が送り込まれた
台湾を巡って、米国と中国の緊張が激化している。中国が台湾の防空識別圏(ADIZ)に戦闘機を飛ばすなど、一方的に挑発を強めているように見える。だが、米国もしたたかだ。米国はいつの間にか、台湾に精鋭部隊を送り込んでいたのだ。これは何を意味するか。
中国は10月1日から5日にかけて、戦闘機や爆撃機など計150機もの空軍機を台湾のADIZに侵入させた。11月に入っても、同じように戦闘機などを飛ばし、空での挑発は常態化しつつある(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM070T20X01C21A1000000/)。

これに対して、米国は意外な手段で反撃に出た。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が10月7日、関係者の話として「約20人の米軍特殊部隊と海兵隊が台湾に派遣され、台湾軍を訓練している」と報じたのだ(https://www.wsj.com/articles/u-s-troops-have-been-deployed-in-taiwan-for-at-least-a-year-11633614043)。
記事によれば、米部隊は「少なくとも、1年前から活動していた」という。これはWSJの特ダネだったが、タイミングからみて、米政府による中国けん制の「意図的なリーク」とみて間違いない。
直後には、米軍の准機関紙であるスターズ・アンド・ストライプスもWSJ記事を引用しながら、同じ内容を報じた。
そこでは、国防総省の報道官が名前を出して「具体的な作戦や関与、訓練についてはコメントしない。だが、我々は、中国による最近の脅威に対抗して、台湾との防衛関係をこれまで同様、支持していることを強調したい。我々は、中国が『台湾海峡問題を平和的に解決する』という約束を守るよう求める」と語っている(https://www.stripes.com/theaters/asia_pacific/2021-10-07/taiwan-china-american-marines-troops-3161550.html)。
つまり、国防総省は事実上、米軍の台湾駐留を認めた。すると、台湾の蔡英文総統も10月28日、CNNのインタビューで、米軍が台湾で部隊を訓練していることを確認した(https://edition.cnn.com/2021/10/27/asia/tsai-ingwen-taiwan-china-interview-intl-hnk/index.html)。蔡氏は「人数は人々が思っているほど、多くはない」「我々は防衛力を高めるために、米国とさまざまな協力をしている」と語った。

米軍部隊の存在は、台湾の地元メディアが昨年「陸軍特殊部隊のグリーンベレーや海軍特殊部隊のネイビーシールズを含む米軍部隊が近年、台湾軍を訓練している」と報じていた。いわば「公然の秘密」を今回、初めて米台双方が認めた形だ。
米国は1979年、中国と公式な外交関係を結ぶと同時に、それまで駐留していた米軍部隊を台湾から引き揚げた。米国の台湾関係法は、台湾への武器供与を認めているが、台湾に対する米国の防衛義務はもとより、米軍部隊の駐留も認めていない。