少年の尻肉がえぐられた「迷宮入りの猟奇事件」…逮捕された男が歩んできた「驚くべき来歴」
11歳の少年・中島惣助が何者かによって殺された。発見された遺体は、目と尻肉がえぐり取られるという悲惨な状態だった。日本中が震撼した猟奇事件。犯人の手がかりは長くつかめなかった。しかし、事件から3年が経ったある日、事態は大きく動く。
【前編】「尻肉をえぐられた少年の遺体が見つかった…迷宮入りした「明治の猟奇事件」、その一部始終」
薬局店主殺し
明治38年(1905年)5月24日午前8時ごろ、麹町4丁目にある薬局の店主・都築富五郎が東京府豊多摩郡代々幡村代々木(現在の渋谷区代々木付近)の山林で首を吊って死亡しているのが発見された。都築は前日から帰宅せず、家族から捜索依頼が麹町署に届いており、自殺のため少し離れた代々木まで出かけたのではないかとされた。

だが、遺体を検視した新宿署の署員たちは都築の遺体に数点おかしなところがあるのに気が付いた。都築の背中に泥が付いており、何者かと揉み合ったかのような痕跡があること、また首には荒縄のような太い紐で締め付けられたような痕(あと)があったのだ。
「これは他殺ではないのか?」
と直感した警察署員は、周辺を捜査。都築の薬局に数日前から怪しい男が出入りしていることがわかった。その男の名前は「野口男三郎(のぐちおざぶろう)」といい、都築に投資話を持ちかけていた。また都築が行方不明になった日、都築と男三郎は一緒に薬局を出て銀行へ行っており、都築の口座から350円(現在の額にして150万円ほど)が引き落とされていることがわかった。