2021.11.19
# 自動車

「運転が心配だと言われるが…」簡単には免許返納できない「地方高齢者の苦悩」

実情を踏まえた選択肢とは?

今月17日にも大阪府大阪狭山市のスーパーで3人が死傷した痛ましい事故が起きたように、高齢者のドライバーによる事故が相次いでいる。となると話題にのぼるのが「免許返納」だが、産経新聞の記事によれば、2019年には75歳以上の免許自主返納数が35万428件にのぼり、全体の58.3%を占めたが、地方など交通手段の乏しい地域の高齢者は返納を渋る傾向にあるという。

地方の自動車移動への依存の実態や、自家用車の代替手段の少なさ……、簡単には免許返納できない地方の高齢者の実情と、それを踏まえた一つの選択肢とは。

取材・文/伊藤真二

地方部の「自動車依存」の実情

国土交通省の調査によると、三大都市圏を除く地方部では20代以上になると移動手段として自動車が担う自動車分担率が5割を超え、その割合は80歳以上の高齢者になっても半数を切ることがない。

「平成27年全国都市交通特性調査」(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/common/001259947.pdf)
拡大画像表示

また、内閣府発表の高齢者の運転免許保有者数を見ても、75歳以上、80歳以上ともに免許保有者数は年々増加している状況だ(注 警視庁資料による。各年12月末の運転免許保有者である)。

出典:内閣府ホームページ(https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/r02kou_haku/zenbun/genkyo/feature/feature_01_3.html)

地方都市の環境を見れば、買物は近くにコンビニエンスストアがあればまだマシなほうであり、大手スーパーやファミリーレストラン、ファーストフード店などは、幹線道路沿いに密集している。

また、生活には欠かせない病院や役場、銀行、郵便局が家の近くにあるのはほんの限られた人だけといった状況だ。特に高齢者にとって病院は健康維持のためにも重要な施設。病院や近隣薬局に最寄り駅からバスが運行している場合もあるが、その駅に行く足を確保するのがたいへんという高齢者もいる。

「生きるために車は必要だ。運転が心配だと言われたって乗るしか選択肢がない」青森県に住む70代後半の高齢者はそう言った。

 

免許保有者で家に車があれば、高齢者でも好きなときに好きな場所へ行くことができる。しかし、免許を返納すると、それは容易ではない。タクシーを呼ぶか、バス停まで歩くか。または家族に送迎を頼むか。

バスの便が多く、タクシーがすぐに来る場所であればいいが、そもそも自動車分担率の高い地方都市では公共交通の利用者は少なく、運営事業者や便数は減る一方だ。また、買物の度にタクシーを使うと、市町村からタクシー代の一部を負担してくれる助成制度があったとしても高齢者の家計は圧迫されていく。

同居の家族に送迎を頼むとしても、それぞれ仕事やプライベートがある。好きなときに好きな場所へというわけにもいかない。

SPONSORED