2021.11.17
# ロシア

プーチンの権力を強化…「チェチェン紛争」が現代ロシアに与えた「決定的な影響」

ポスト・プーチンのロシアを読む
真野 森作 プロフィール

米本土を攻撃して約3000人を殺害した未曽有のテロに対し、米国は報復の戦いへとのめり込んでいく。アルカイダ指導者のオサマ・ビン・ラディン容疑者をかくまったアフガンのタリバン政権を倒すため、2001年10月にアフガン戦争を開始する。プーチン政権は自らが持つ軍事情報を米側に提供し、ロシアが強い影響力を有する旧ソ連の中央アジア諸国が米軍に協力することを容認した。

あれから20年が経った。バイデン米政権の決断に基づいて米軍がアフガン撤収を開始した今年4月以降、タリバンは攻勢を強め、8月頭からはアフガンの各州都を次々陥落させていく。8月半ばには首都カブールへなだれ込んで政権奪取にやすやすと成功した。米国によるアフガン民主化の試みは壊滅し、ガニ大統領は国外へ逃亡した。

世界が驚いた米国の失敗に対し、プーチン氏は「欧米の多くの政治家は、政治や行動の規範を他国に押しつけてはならないと認識するに至っただろう」と論評した。プーチン氏は中央アジア諸国への米軍駐留にも今度は反対する立場だ。2001年からのこの間、2014年のウクライナ危機を頂点にロシアと欧米との関係は決定的に悪化していた。

 

プーチン政権誕生の原点

それでは、ロシアにとっての"アフガニスタン"、すなわち「対テロ」の看板で戦った第2次チェチェン紛争の地は一体どうなったのだろうか?

まずは日本人にとってなじみの薄いチェチェンについて紹介したい。ロシア連邦は州や特別市など80超の連邦構成体で成り立っており、チェチェン共和国もその一つである。ロシア西南部の北コーカサス地方に位置し、岩手県程の面積に百数十万人が暮らす。少数民族のチェチェン人が大多数を占め、ロシアでは数少ないイスラム圏の一つだ。

大コーカサス山脈によって南北に分かれるコーカサス地方は黒海とカスピ海に挟まれた回廊のような地形で、中東とロシア本土とを結ぶ。南側にはジョージア(グルジア)、アゼルバイジャン、アルメニアという旧ソ連の南コーカサス3カ国がある。かつてロシア帝国とオスマン帝国がせめぎあった地域だ。

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