ロシアではソ連崩壊後の混乱期を体験した40代以上の国民が今でも人口の半数を占める。国家に統制されたテレビのニュースをよく見る高齢者がプーチン氏の岩盤支持層である半面、より自由なネットやSNSを利用する若者たちは反プーチン的という傾向が世論調査から浮かび上がっている。若い彼らにとってプーチン氏はロシアの停滞の象徴である。少子高齢化社会のロシアでプーチン氏の支持率は今後ゆっくりと、しかし確実に低下していくはずだ。
その先に訪れるポスト・プーチン時代に、チェチェンが再び「火薬庫」となる恐れがある。プーチン後継者がカディロフ体制への巨費投入の継続を是とするか否か、新たな個人的関係を結べるか否かが鍵だ。
さらにチェチェン内部の矛盾の蓄積から、過激派志向のチェチェンの若者たちが地元やロシア本土をターゲットにしたテロ攻撃にのめり込んでいく可能性も否定できない。2015年ごろに中東のシリアとイラクで疑似国家を形成した過激派組織「イスラム国」(IS)には大勢のチェチェン人が参加していた。
米国はアフガン侵攻から20年後に「敗北」した。ロシアがチェチェン紛争に「勝利した」と言い切れるかどうかはポスト・プーチン時代が訪れる今後にかかっている。