11月2日に、米国CDC(米国疾病予防管理センター)は、小児のファイザー製の新型コロナウイルスワクチンの緊急使用を認可。翌日からアメリカでは5歳から11歳の子どもへの接種が開始された。
アメリカ・ボストン在住で、ハーバード医学部助教授、マサチューセッツ総合病院(MGH)の小児精神科医で小児うつ病センター長をしている内田舞医師の6歳になる息子さんも先日1回目のワクチン接種を終えた。そのときの模様とアメリカで現在進んでいる小児ワクチン接種の現状を前編で内田医師にレポートしてもらった。
後編では、安全性を中心に5~11歳の子どもになぜワクチン接種が進んいるのか、その根拠について内田医師が解説。
日本では現在感染者数が低下し、「もうコロナは大丈夫」といった空気感が漂い始めている。しかし、世界では次の波に備えて予防策を展開し始めている。子どものワクチン接種を日本はどう考えていけばいいのだろうかー。
世界中の子どもが参加して治験が行われた
アメリカでは12歳以下の接種がスタートしましたが、「本当に子どもにとって安全なの?」「子どもにワクチン接種する意味はあるの?」という質問を日本からたくさんいただきます。
ですが、子どものコロナワクチン接種は突然、何の根拠もなくスタートしたわけではありません。小児に対しての有効性を調査するために、2021年3月から子どもの治験がスタートしました。この治験には、4600名以上もの子どもが参加し、私の友人のお子さんや息子たちの友達でも治験に参加していた子がいました。
この治験は最初、子どもが必要なワクチン量を決める試験から始まりました。ファイザー・ビオンテックのワクチンに関しては、114人の5歳から11歳のお子さんが参加して3つの量が用意されていました。それぞれの量のワクチンを接種したお子さんたちの副反応と免疫反応を比べて、1番副反応が低く保ち、でも充分な免疫反応を起こすのはどのくらいの量なのか、そういうスイートスポットを見つけるための試験でした。
その結果、5~11歳の年齢に関しては大人の1/3の量で充分な免疫反応があり、副反応も割と低く保てる、ということが確認されました。
「子どもはどうして大人より少ない量でもいいの?」という質問を受けることが多いのですが、これは体重や身長など体のサイズが小さいということではなく、免疫システムの成熟度(maturity)をみています。子どもの免疫反応が大人よりも強いということが理由です。
適切な量が決まった後は、「ランダム化比較試験(RCT)」というどんな薬でも行う治験を行いました。この治験には、4647人のお子さんが4か国、90か所以上の病院で参加されました。
この RCT は1対2で、2/3のお子さんがワクチンを打って、1/3のお子さんがプラセボを打つというタイプの試験です。
ここでチェックするポイントは、
2)感染発症予防効果があるか
3)安全か(安全性)
という3つを調査していきました。