「俺、全然スキルがない…」"学び直し"に焦る中年会社員が、知っておかないとマズいこと
日本のDX(Digital Transformation)の遅れが問題視され、学び直しを意味する「リスキリング」を求める風潮が高まっている。特にこれまでのアナログな仕事に慣れ親しんできた中高年ミドル層に対する学び直し圧力は強くなる一方だ。
日本社会全体を変革していくためには欠かせないDXだが、学び直しを求められるミドル層の中には抵抗感を覚える人も少なくない。一方で、何も学ばずに、これまでの経験値のみでこれから10年、20年働き続けられるかどうかにも不安は残るだろう。
長年働いてきたミドルはリスキリングをどう捉えればよいのか。日本を代表する大手企業を中心に400社以上で人材育成支援を手掛けてきた(株)FeelWorks代表取締役の前川孝雄氏が、最新刊『50歳からの人生が変わる痛快! 「学び」戦略』 (2021年11月 PHP研究所)の執筆背景をもとに考察する。
いまだ多い、紙とハンコが求められる残念な仕事
私たちの日々の生活や仕事を効率化するためにDXは不可欠だ。デジタル庁が設立され、コロナ禍で非接触型のサービスが求められるようになった時勢もあり、官民挙げてDX推進が声高に叫ばれ続けている。しかし、現実にはいまだアナログな残念な事象も少なくない。
私が営む会社で、最近経験した残念なケースを紹介しよう。2年越しで立ち上げた新規事業が認められ、ある公費助成を獲得できることになった。大企業のような体力のない中小・ベンチャー企業にとって、リスクを抑えて挑戦できることは本当に有難いことだ。プロジェクトメンバーと共に喜んだものだ。
しかし、このプロセスでは、アナログな手続きを求められる非効率性、スピードの遅さに頭を痛めた。まず交付決定に至るには、行政との2年越しの手続きを要した。この事業計画もしかりだが、驚いたのが交付決定後の事業活動中に提出する膨大な資料。これまでの商取引慣行にはない書類を求められ、実務上必要のない様式をあえて作るなど、プロジェクト現場に大きな負荷がかかった。
新規事業担当メンバーはなぜここまで細かい書類が必要なのかと嘆きつつも、時間をかけて毎週のようにPDFデータを作成して丁寧に事務局に書類を提出した。