資本家がカネを吸い取っている
で、利益はこの20年で2倍にしかなっていないのに、株主配当金だけは5倍以上になっているということは、日本の企業は儲かったおカネのうち、株主に回す分をどんどんどんどん増やしてきたということになっているわけです。

一方で、利益が2倍になっているのに給与を全く増やしてこなかったってことは、要するに、日本の企業は本来ならば私たちのような一般の労働者に給料として回してしかるべきおカネを、どんどん大金持ちの株主たちに回していったってことです。
――その配当金は本来、私たちがもらっていていいおカネ、っていうか、受け取るべきおカネなのに、企業が勝手に株主たちに回していた、ってことですよね! 大金持ちはますます大金持ちに、庶民はいよいよ貧しくなるばかりじゃないですか。企業は第一に、利益を実際に生み出している労働者を大事にするべきでしょう。ホント、腹の立つ話ですね……。
藤井 そうです。少々意地悪な解釈をするなら、大金持ちの資本家たちが、株式会社という仕組みを使って、この20年間、私たち一般の労働者の国民からカネを吸い上げ続けてきた、っていうことですね。
じゃあ、なぜ企業はそんなことをしてきたのかっていうと、株の価格が高いか低いか、っていうこと(一般にその企業の「時価総額」といわれたりします)で、その企業の「価値」を評価する傾向がどんどん強くなってきたからです。だから、各企業は自社の生き残りをかけて、必死になって株価を上げようとしてきたのです。
株価を上げるためには、できるだけたくさんの株を買ってもらわないといけない。そして、株を買ってもらうためには、「買っていただけたら、こんだけたくさんの配当金を差し上げますよ」っていわないといけない――ということで、各企業は配当金をどんどん上げていったわけです。そうやって企業の間で「配当金の引き上げ競争」が起こって、あっという間に配当金は5倍以上になっちゃったのです。