2021.11.29
# 細胞 # 進化 # AI

赤外線だって見えるようになる? 東大教授が本気で進める「脳の改造」計画とは

脳とAIをつないで「人間の能力を拡張する」方法

脳と人工知能をつないで、人間が持つ能力を拡張できないか——そんな研究が世界中で進んでいるのをご存知でしょうか。すでに「念じるだけでロボットを操る」「考えていることをAIが翻訳してくれる」など、次々と驚くべき研究成果が報告されているのです。

発売前から話題となっている『脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか』(紺野大地・池谷裕二:著/12月16日発売)では、そうした最新研究を紹介しながら、人工知能を使って人間の潜在能力をどう活かしていくべきかを考えます。

この度、本書の刊行に先駆けて、東京大学教授の池谷裕二さんによる本書の前書きを、先行公開します!

人間は、自ら発明した道具で進化していく

私たちは今、人間という存在、その意味や価値が変わりつつある激動の時代を生きています。その理由の1つは、人工知能(AI)の台頭ですが、それだけではありません。本書『脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか』で主眼となる「脳の改造」がポイントです。

これまでも人類は、言葉や文字や電気やインターネットなど、様々な道具を開発してきました。こうした道具は、単に生活が便利になるだけでなく、人間の生活様式を、実質的に変えてきました。つまり、役に立つ道具は、人間の「在り方」を変える力を持っています。

【写真】役に立つ道具は、人間の「在り方」を変える力を持っている役に立つ道具は、人間の「在り方」を変える力を持っている photo by gettyimages

ここで留意したいポイントは、その道具は「人間が発明したもの」という点です。
つまり、人間は道具を開発し、自身を開拓してゆく生き物です。他の生物たちは、あくまでもDNA変異によって、自然の力で進化します。人間は、自然界の進化ルールではなく、人間が編み出した道具という独自の方法で、自身の能力を進化させる能力を備えています。

身体そのものを変える可能性

そうした長い人間開拓史のなかでも、特に劇的な変化が、いま起こりつつあります。 なぜなら、最近の新しい道具は、人間の生活だけでなく、人間の身体そのものを変える可能性があるからです。

従来の道具は、自動車にしても、飛行機にしても、ヒトの身体運動を超える能力を発揮することはありましたが、それはあくまでも道具が優れているだけの話で、ヒトの身体そのものは変化がありませんでした。

これは人工知能についても同じです。人工知能が秀(ひい)でた性能を示しても、人間の能力そのものの限界が突破されたわけではありません。

つまりヒトは、どれほど賢明であっても、どれほど俊敏であっても、結局は、自身の身体という限界に制約された範囲の中で活動してきたに過ぎません。もちろん、心臓ペースメーカーや薬剤など、ごく一部には、身体を改造したり、改良したりする道具がなかったわけではありません。

【写真】身体の一部である脳これまで人間は「身体」という物理的制限から完全に解放されることはなかったが…… photo by gettyimages

しかし、「身体」という強烈な物理的制限から完全に解放されることはありませんでした。

関連記事