"サイエンス365days" は、あの科学者が生まれた、あの現象が発見された、など科学に関する歴史的な出来事を紹介するコーナーです。
1984年のこの日、生物と機械の制御・通信の構造を同一の視点で研究しようと試みる理論「サイバネティクス」 の提唱者であるノーバート・ウィーナー(Norbert Wiener, 1894-1964)が誕生しました。
アメリカのミズーリ州・コロンビアで生まれたウィーナーは、幼年期より数学や語学など多方面の学問を修めていた父のレオ・ウィーナーから英才教育を受けており、自身もその才覚を遺憾無く発揮、18歳の頃には数理哲学分野でハーバード大学から博士号を得ていました。
大学院の卒業後は同大学の在外研究員としていくつかの国で研究を続け、バートランド・ラッセルやヒルベルトといった名だたる数学者のもとで学びました。

ウィーナーは確率・統計の研究やブラウン運動の研究などで知られますが、彼の業績を語る上で外せないのは第二次世界大戦後に同名の著書の中で提唱した「サイバネティクス」でしょう。
この「サイバネティクス」とは生物個体と通信機械を同様に一つの目的達成のためのシステムとして捉えたとき、両者ともに「外部からの情報を集めてその行動の結果を予想し、次の行動を取る」という機構を備えているという観点から両者の制御システムや構造に関する一般的な理論を求め、その制御技術を確率するという学問です。
現代における計算機科学の基礎を作ったといっても過言ではないこの理論は、この分野で同様の立ち位置であるクロード・シャノンによる「情報理論」と同年である1948年に発表されました。
これらのウィーナーとシャノンにジョン・フォン・ノイマンを加えた三人は現代でも「情報科学の創設者」と位置付けられることもあります。
この「サイバネティクス」の考え方は現代でも神経科学や人工知能研究などに大きな影響を与えています。
