ドイツ新政権に漂う「嫌な予感」…最大の懸念材料は緑の党の環境政策と外交手腕

大嵐の中の船出となることは間違いない

左派政権が吉と出るか、凶と出るか

エネルギー価格が暴騰し、コロナ禍が再燃し、次第に非常事態めいていく世界情勢の中で、ドイツの政権交代がなされようとしている。

9月の総選挙以来、連立協議に臨んでいたSPD(社民党)、緑の党、自民党の3党だったが、11月24日にようやく共同施政方針が発表された。それを見ながら私は、日本で2009年に始まった民主党政権をまざまざと思い出した。ドイツは果たして大丈夫だろうか? 日本の民主党政権下では迷走が続き、あまり大丈夫じゃなかった。

来たる政権は、アンペル(信号)連立と呼ばれる。それぞれSPDが赤、緑の党が緑、そして自民党(FDP)が黄色を党のシンボルカラーとしているからだ。

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首相に就任するのはSPDのオラフ・ショルツ氏。ちなみにSPDは言うまでもなく左派で、緑の党はそれよりもさらに左。一方、自民党は自由市場経済や国民の自主性を重んじる党で、保守に近い。つまり、資本家を敵とみなす緑の党とは極めて相性が悪い。

ただ、現実として、ドイツにはまもなく社会民主主義を標榜するSPDの政権が誕生し、自民党もそこに加わる。ドイツのいわば “公式の左旋回”は、この国がこれまでEU、あるいは世界で背負ってきた役割を考えると、重要な影響をもたらす可能性がある。

 

ドイツにとってはもちろん、EUにとっても、果てはEUと足並みを揃えることの多い日本にとっても、それが吉と出るか、凶と出るかが、まったくわからない。

ちなみに、アンペルが新しい共同施政方針を練っていた間、国民の興味は肝心のSPDの動向よりも、緑の党か自民党か、どちらがより多くの主張を通すかということに集中した。それほどこの2党は考え方が異なる。

実は、前回の総選挙の後、つまり4年前の今頃、やはり自民党と緑の党は連立交渉に加わっていた。ただし、当時は社民党とではなく、メルケル首相率いるCDU(キリスト教民主同盟)と。メルケル首相が緑の党との連立を切に望んでいたと言われる(今ではメルケル首相の左派へのシンパシーは周知の事実)。

ところが4年前は結局、緑の党と自民党が折り合えず、連立交渉は破綻。この時、自民党のリントナー党首が居並ぶジャーナリストたちの前で放ったセリフ、「悪い政治をするなら、しないほうがマシ」は、まさに伝説となった。当然、これにより緑の党も与党になるチャンスを失い、結局、SPDが担ぎ出されて、ドイツは再びCDU/CSUとSPDの連立政権になったという経緯がある。

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ただ、このためにリントナー氏が払った代償は大きかった。ドイツのジャーナリストには緑の党のシンパが多いため、彼らの恨みを買ったリントナー氏は以後4年間、「政治を放棄した政治家」としてメディア界のサンドバッグになった。

つまり、今回はその教訓もあり、自民党も、また緑の党も、何が何でも連立政権を成立させるという固い決心で臨んだ。だからこそ、彼らの協議バトルに国民の興味が集中したのである。

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