安倍が講演で語った「岸田批判」の真相
近代日本の内閣制度が確立してから、「再登板」した総理大臣は意外に多い。初代首相の伊藤博文もそうだし、松方正義、山縣有朋、西園寺公望、大隈重信、近衛文麿に吉田茂・・・・・・。もっとも、選出ルールが現在とは異なり、比較的容易だった時代の話だ。

だが現憲法下において、退陣後に「再登板」したのは安倍晋三元首相ただ一人である。
党内には、いまなお安倍の3期目の首相就任、すなわち「再々登板」を望む声は根強い。三角大福中をも凌駕する最強政治家として、安倍の発信力は岸田政権樹立後も衰えを知らない。
師走に入った12月1日、ホテルニューオータニ「鳳凰の間」で開かれた西田昌司参院議員の政治資金パーティに講師として招かれた安倍元首相は、岸田政権についてこう言い放った。
「分配、分配と分配ばかり言っているが、分配より成長をもっと言わないと日本に活力は生まれない」
「分配」を説く岸田よ、忘れるなよ、安倍晋三はここにいる! とばかりに苦言を披露したのだ。岸田首相に成り代わって実現できる政策力を自信満々にアピールした。
さらに続けて『文藝春秋』に発表されたいわゆる「矢野論文」についてこう語ったのだ。