主題歌はスカートとPUNPEEのコラボによるシティポップ、エンディング曲はアイドルソング風なアニソン。
かつてなら「サブカル」と呼ばれていたものと、現代のカルチャーがごった煮になって存在する2020年代の東京の繁華街を舞台に、YouTuberや地下アイドル、芸人さんの深夜ラジオ、課金ガチャ、果ては半グレ…などの乗客たちが伏線となって物語が展開していきます。
小戸川は不眠症を患っており、不眠症のタクシー運転手と言われて、40代の筆者がパッと思い浮かんだのは『タクシードライバー』のロバート・デ・ニーロ演じるトラヴィスでした。そして安直な連想ですが、小戸川もまた、トラヴィスに似たハードボイルドで危うい雰囲気を持っています。
こうやってあらためて書くとすごく面白そうです。なにのなんで自分は一話目で一回脱落したんだろう……。思うに、最初に出てきた客が悪いのです。あの、SNSにとりつかれたコビトカバが。
オッドタクシーのサブカル色
SNSの隆盛と共に、かつてサブカルと呼ばれていた物事は世間に広く情報共有され、薄まり、「知る人ぞ知る」ものから、みんながうっすらと知っているもの……言うなれば「うすらカルチャー」へと変化しました。
芸人さんの深夜ラジオを聴いたことがない人も「よく知らないけど面白いんでしょ?」と雑な知識としては持っている。落語を聞いたことがない若者も「うまい落語家の話は聞いた傍から脳裏に映像が浮かぶ」ことは知っているし、動画配信なんて見ない年長者も「YouTuberは若者に人気」と大まかには認知している。
老若男女問わず、自分はよく知らないけれど、別の集合体に存在する文化・コードがあり、そこに即した発言・行動がみんなに面白がってもらえて「バズる」らしいと認識している現在。
一話目の小戸川の乗客である、コビトカバの大学生・樺沢太一もそういううすらカルチャーの徒で、乗車早々小戸川に「最近面白いことありました?」「バズリたい」「友達とかバズってるし」「いいねやフォロワーの数がソイツの値段」なんて前のめりに運転中の小戸川に畳みかけます。