循環する土地の上で

ジェロームさんと松岡さん。

この旅の最後に、会いたい人がいた。2020年に神山に拠点を移した料理人のジェローム・ワーグさんと、パートナーで環境活動家の松岡美緒さんだ。2人は山間にある改装中の空き家で迎えてくれた。

「森の学校みっけ」で子どもたちが木々でつくった秘密基地。

ジェロームさんが「大地にとてつもない力がある」という神山は、有機栽培をする農家も多く、食材を調達するにはこのうえない場所。さまざまな食のプロジェクトを考案中という。一方、パーマカルチャーやエディブル・スクールヤード(校庭で食物を育て食べ、命のつながりを学ぶ)について学んだ松岡さんは、野外のオルタナティブスクール「森の学校みっけ」の設立準備をしている。

 
「みっけトレイルクラブ」で、子どもたちは植物や生き物について学ぶ。

「自然と子どもが交わりながら、食を通して学ぶ環境をつくりたいんです。この場所はすでにフードフォレスト。棚田や竹林があるし、梅、桃、すもも、柿、桑、ナツメ、茶の木……と本当に豊か」

STAY&WORKをコンセプトに、リラックスして働ける空間を意識した宿泊施設〈WEEK神山〉。町内産のスギ材とヒノキ材からなる高床式の宿泊棟は、全室から鮎喰川が望める。

築94年の家は28年間空き家だったうえ、すぐそばの田畑も7年前に耕作放棄地になり、雑草が茂っている。でも、何かがたしかに変わり始めている。松岡さんは足元の葉っぱを一枚ちぎって、こちらに手わたす。

「去年ジェロームが篠竹を抜いた場所に、春菊の原種が生えてきてくれたんです。いい香りでしょう」

草刈りをしたら生えてきたという春菊の原種(ベニバナボロギク)。

神山にたくさんの人が惹かれ、根を下ろしていくのは、人やプロジェクトの力だけじゃない。この地には、他を想う心や土地の力がもともとあって、それらが掛け合わさることで、いまの町になっている。小さな春菊がそれを証明していた。